現場スタッフにだけメリットが無い「緊急ショートステイ」をわかりやすく解説

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基本的にショートステイというのは、
『在宅介護の最後の拠り所』になるべくサービスなので、
どこの事業所も予約がいっぱいで、
新規での利用や急に利用したくても
『満床で利用できない』
という状況があります。

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◆緊急ショートステイとは?

ショートステイを
・利用したくても利用できない状態
・利用しなければならない急迫な状態

にある利用者や家族を救済するために、
国が『緊急ショートステイ』というシステムを作り、
その加算や受け入れの要件についても緩和してきています。
具体的な要件は、
・身内に不幸があり急に出掛ける必要があり被介護者の介護が出来なくなる場合
・元々、ショートステイを利用する事が予定されておらず居宅ケアプランにも記載が無い場合
・被介護者が介護者(家族)から虐待を受けていると疑われる又は確認出来た場合
・その他、担当ケアマネが『緊急性』を認める場合

等になります。

〇厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等
(平成24年3月13日厚生労働省告示第95号)
十七 指定居宅サービス介護給付費単位数表の短期入所生活介護費の注10の厚生労働大臣が定める者
次のいずれにも適合している者

利用者の状態や家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護(指定居宅サービス等基準第百二十条に規定する指定短期入所生活介護をいう。ロにおいて同じ。)を受けることが必要と認めた者

現に利用定員の百分の九十五に相当する数の利用者に対応している指定短期入所生活介護事業所(指定居宅サービス等基準第百二十一条に規定する指定短期入所生活介護事業所をいう。)において、緊急に指定短期入所生活介護を受ける必要がある者

◆緊急ショートステイの加算要件と算定基準

〇厚生労働大臣が定める基準(平成24年3月13日厚生労働省告示第96号)
二十 短期入所生活介護費における緊急短期入所体制確保加算の基準

指定短期入所生活介護事業所(指定居宅サービス等基準第百二十一条第一項に規定する指定短期入所生活介護事業所をいう。以下同じ。)において、緊急に指定短期入所生活介護(指定居宅サービス等基準第百二十条に規定する指定短期入所生活介護をいう。以下同じ。)を受ける必要がある者(現に指定短期入所生活介護を受けている利用者を除く。以下この号において同じ。)を受け入れるために、利用定員の百分の五に相当する数の利用者に対応するための体制を整備していること。

算定日が属する前三月間において、利用定員に営業日数を乗じた総数のうち、利用延人員の占める割合が百分の九十以上であること

上記の基準を満たしていれば緊急加算が算定出来ます。

『緊急利用者の受入れであれば、短期入所生活介護の専用居室や特別養護老人ホームの空床を利用する場合のほか、静養室でも緊急短期入所受入加算を算定できる』

ということですので、
特養の空床を利用したり、
特養が満床でも静養室や談話室や休憩室などを
宿泊できる状態にして利用者に提供しなさい

ということなのです。
ではどれだけの加算が算定出来るのでしょうか?

〇指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)
緊急短期入所体制確保加算・緊急短期入所受入加算の要件について
8 短期入所生活介護費
注10
別に厚生労働大臣が定める基準に適合するものとして都道府県知事に届け出た指定短期入所生活介護事業所が、利用者に対し指定短期入所生活介護を行った場合は、緊急短期入所体制確保加算として、1日につき40単位を所定単位数に加算し、当該指定短期入所生活介護事業所が、別に厚生労働大臣が定める者に対し、居宅サービス計画において計画的に行うこととなっていない指定短期入所生活介護を緊急に行った場合は、緊急短期入所受入加算として当該指定短期入所生活介護を行った日から起算して7日(利用者の日常生活上の世話を行う家族の疾病等やむを得ない事情がある場合は、14日)を限度として、1日につき60単位を所定単位数に加算する。ただし、緊急短期入所受入加算については、注6を算定している場合は、算定しない。また、当該事業所において、連続する3月において緊急短期入所受入加算を算定しなかった場合は、当該連続する3月の最終月の翌月から3月の間に限り緊急短期入所体制確保加算及び緊急短期入所受入加算は、算定しない。

居宅ケアプランにショートステイを利用する旨(随時とか定期的にとか)の内容が盛り込まれていても、『緊急利用』とケアマネが判断する場合は1日につき40単位を7日間が基本です。
※1単位は地域によって金額が異なりますが、
1単位=10円と仮定すると
10円×40単位×7日間=2800円
となります。
居宅ケアプランにショートステイを利用する旨が元々記載されていない場合に緊急利用することになった場合は、60単位を7日間が基本となります。
※10円×60単位×7日間=4200円
正直な感想として、
7日間で2800円とか4200円とかでは
職員一人分の人件費にもなりません。
そんな『はした金』では、
緊急利用者を受け入れる労力を考えると
『釣り合っていない』と言えます。
今日来るはずじゃなかった利用者が
急に利用することになったり、
顔も名前も全く知らない新規の利用者を
急に受け入れなくてはならなくなった場合は
現場スタッフは業務負担が増加し
相当な労力を必要とします。
ましてや、満床以上の利用者を介護するだけでも大変なのですから、内心は
『緊急利用者はお断りしたい』
というのが本心です。
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◆緊急ショートステイは拒否出来るか?

居宅ケアマネから『緊急要請』があった場合、
ショートステイ事業所はその受け入れを拒否出来るでしょうか?
そもそも、短期入所生活介護(ショートステイ)の受け入れは、
『正当な理由がなく受け入れを拒否できない』
としてあります。
通常利用の場合、
『満床』は正当な拒否理由になりますが、
緊急利用の場合は、
『静養室や談話室や休憩室でも受け入れ可能』
となっているので満床だけでは正当な拒否理由にはなりません。
そして、事業所は緊急時のために
・常にそういう『宿泊出来るスペース』を確保する努力をしなさい
・そもそも静養室や休憩室はあるでしょ?
・だから満床は正当な理由にならないよ

という暗に圧力を掛けられているのです。
もちろん、
「特養も満床だし静養室も休憩室も空きが無い」
と言ってしまえば受け入れ拒否は出来ます。
しかし本当にそうならば良いですが、
それが断るための虚偽の発言だったり
事実ではないことで拒否した場合は、
行政の監査で指摘されたり指導されたり、
『実績』として認められず
事業所の名声を落とすことになりかねません。
『人員不足』も正当な拒否理由になり得ますが、
・たった1人利用者が増えただけで回せなくなる人員配置はおかしい
・そもそも今まで人員配置基準を満たしていなかったのでは?

という『やぶへび』になる恐れがあるため、
おいそれと『人員不足』というワードを社外には発信したがりません。
そういったマイナス面やデメリットを考えると、
緊急加算という(微々たる)プラスにもなるし、
受け入れたという実績にもなりますので、
事業所や経営者としては
受け入れを拒否する選択肢というのは殆ど無い
と言えるでしょう。

◆公共の福祉論や奉仕論だけでは行き詰る

緊急ショートステイというのは、
在宅介護をしている家族や利用者にとっても、
受け入れた事業所にとっても、
メリットがある必要なシステムなのはわかりますが、
唯一、メリットが無い人達がいます。
それが、現場スタッフです。
家族は緊急時にショートへ預けられて満足し、
虐待を受けていた利用者も避難先として安全確保が出来て、
居宅ケアマネも緊急的な案件をさばけて安心し、
国や行政も高齢者の安全確保のシステムを自画自賛出来て、
事業所も緊急加算と受け入れた実績を手にすることが出来ます。
社会福祉や公共の福祉の観点から見ても、
利用者第一主義の奉仕論の観点から見ても、
『ぬかりの無いシステム』
のように見えますが、
現場スタッフだけ泣いています。
事業所に加算が入っても
現場へは手当として下りてきませんし、
事業所の実績として評価されても
給料や年収が上がるわけでもないですし、
現場スタッフの評価が上がるわけではないので
メリットは無いに等しいのです。
そういった意味で、
現場スタッフにとって
緊急ショートステイというのは
・拒否権の無い押し付け利用方法
・業務負担が増えるだけの迷惑利用方法
・出来れば無い方が良い交通事故のような利用方法

と言っても過言ではありません。
もちろん、福祉業界に身を置いて
公共の福祉や奉仕を語る上では、
在宅介護で困っている人を助ける役割が必要であることもわかりますし、そうあるべきだと思います。
しかし、『片手落ちのシステム』では
いつか必ず行き詰まり破綻するのは世の常です。
介護職員がいなくなれば
緊急ショートというシステムも成立しません。

◆具体的な改善策

システムや業界を批判するだけでは芸がないので、
具体的な改善策案を考えてみたいと思います。
まず大前提にあるのは、
職員が幸せになれば利用者も幸せになる理論』です。
そして、介護業界に圧倒的に不足しているのは
『人材(職員)』と『財源(お金)』です。
『人間関係』とか『職場環境』というものは、
人材(職員)とお金があれば自然に解決すると思います。
『金持ち喧嘩せず』は間違っていないのです。
問題は、どうやって解決していくかということです。
『人材不足』に関しては、
・処遇(給料)の改善
・外国人労働者の参入

という政策が進められています。
要は給料・収入が良ければ働き手は集まるのですから、
その為に『財源を確保』することが急務です。
財源がない、若しくは限りがあるから職員に満足な給料が支払えない
という状況を改善しなければなりません。
介護業界の財源は『介護保険』です。
平成9年(1997年)に国会で介護保険法が制定されました。
施行されて20年が経過しましたが、
『財源』に関しては既に破綻寸前と言えるでしょう。
少子高齢化が進んでいる日本で、
現在の介護保険料だけで高齢者を支えていくには
現場スタッフの給料を多く出せないシステムになっています。
しかし、高齢者のケアを支えているのは現場スタッフです。
支えている労働者に満足な生活が出来る収入や環境を与えず、
過酷な労働を求める構図は
『奴隷制度そのもの』
ではないでしょうか。
誰が好んで奴隷になりたがるでしょうか。
もちろん、『福祉論』や『奉仕論』という
高尚な気持ちでケアをしている労働者もいることでしょう。
しかし、それは『高尚という名の自己満足』にしがみつき、
思考が停止、若しくは退化してしまっていると言えます。
【参考記事】
「介護を極める」と言っている人は思考が停止している理由は?
奴隷状態から脱するためにも、
『財源の確保』が最優先で必要だということがわかりましたが、
どこからその財源を確保すればいいのでしょうか。
考えられる選択肢は、
・介護保険料の値上げ
・他の税金から確保
・サービス費の自由競争化

ですが、
『自由競争』を解禁すると
高い料金の事業所は公共の福祉からかけ離れてしまい、
低い料金の事業所は職員への給料も低くなりがちで人材不足が解消できない
という益々混沌とした状態になってしまうかもしれません。
いやしかし、
それが本来あるべき『経営方法』なのかもしれません。
経営能力の無い事業所は潰れていき、利用者にもスタッフにも目を向けることの出来る『良質の事業所』のみが生き残れる時代が来る日を願ってやみません。

コメント

  1. デイちゃん より:

    逆に、ショートスタッフにとって、今の職場で働くメリットって何なんでしょう。
    給料が高い?仕事が楽しい?介護の知識が身につく?
    メリットが十分なら、少々のデメリットがあっても、ま、いっか~ってなりそうですが。
    なんか、つらいばっかりだと、続けられないですよね。

  2. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    転職するなら同じ介護業界なら殆ど待遇は変わらないでしょうし、他の業界ならば年齢的にデメリットの方が大きそうです。介護業界に足を踏み入れてしまった時点で『終わっていた』のかもしれませんが、『終わり』にしない為の動き方を模索中です。