何でもかんでも「身体拘束」と言って禁止してしまうのも限界がある

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介護施設では「身体拘束」は虐待に当たりますので、禁止されています。

「拘束」と聞くと、
・体を縛りつける
・身動きが取れないようにする

という印象ですが、
他にも様々なグレーな部分が存在します。

虐待についてのグレーゾーンについては、
高齢者の虐待(グレーゾーン)考察
の記事でも書いていますのでご参照下さい。

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◆身体拘束のグレーゾーン

例えば、
『食事の時にエプロンをつけ、エプロンの下の部分をテーブルに乗せて、その上に食事を置く』
というのは、介護施設ではよく行われていることなのですが、これも厳密に言えば「身体拘束」に当たります。

こういうエプロンの使用方法にはもちろん『食べこぼしを防止する』という理由があります。

では、何故『厳密に言えば身体拘束』になってしまうのでしょうか。

この状況では
『エプロンと食事によって身体がテーブルに繋がれ、自由に動くことが出来ないので、利用者をテーブルに拘束している』
ということになります。

ですから本来は、
やってはいけないケア方法なのです。

しかし、グレーな部分として平然と横行しているのが現状です。
定期的な行政の立入検査では全然現場を見にも来ませんが、もし行政の人がその現場を見れば「身体拘束」と取られてしまう可能性があります。

「食べこぼし防止のためなので、身体拘束をする意図も意思もありません」
と申し開きをしても、
「食べこぼしで服が汚れたら、その都度着替えればいいじゃないか」
「汚れたら服を着替えることこそ、人間らしい生活ではないか」
「人間らしい生活をすることで利用者のQOLを向上させ、更衣する動作でADLの維持や向上をさせるのが本来のケアの目的ではないか」

などというゴタクを並べてくるでしょう。

しかし、実際問題、1日3食プラスおやつで計4回の更衣を、10人の利用者に行っていたら、それだけで40回の更衣が必要になります。

それ以外にも排泄や入浴などの『3大介護』で様々なケアが必要になってきます。
万年、人員不足のケアスタッフでは到底間に合わないのは現状を見ればわかることです。

そういう自分たちに不利な状況にはフタをして、現場にばかり業務の負担を押し付けます。
まずは、そういう『介護業界全体の在り方』を再検討し、改善していく必要があるのではないでしょうか。

そういう意味でも、
「高齢者疑似体験」の次は「介護職員疑似体験」をお願いします

◆その他にも様々な「身体拘束」の禁止がある

利用者は人間なのですから、当然、
『何でもかんでも「身体拘束」をして身体の自由を奪われ人権を侵害されることがあってはならない』
というのはわかります。

しかしその反面、
『何でもかんでも身体拘束禁止』
というのも現状では限界がきているのも事実です。

どうしても、やむを得ない場合に限り、
『身体拘束同意書』
というものに同意・署名をして貰った上で身体拘束をすることが出来ます。

そうは言ってもやはり介護職のレベルは低いのか
という記事にも書きましたが、3つの要件が必要です。

3つの要件とは
①切迫性…利用者本人や他者の身体や生命が切迫していること
②非代替性…身体拘束をする以外に方法がないこと
③一時性…身体拘束を一時的なものとして捉え、外れる見込みを常に検討していること

それくらい介護施設で「身体拘束」をするのはハードルが高いと言えます。

例えば、
・ベッドから転落する恐れがある利用者をベッド柵で囲む(4点柵)
・車椅子から滑落する恐れがある利用者を車椅子に付属している腰ベルトで固定する
・フロアやユニットから出れないように玄関に鍵をかける

という行為も「身体拘束」に当たるのでやってはいけません。

しかしベッドや車椅子から落ちれば怪我をする可能性もありますし、怪我に至らなくてもケアスタッフはインシデントレポートやひやり・はっと報告書を書かなくてはなりません。

・利用者にとっては怪我のリスク
・ケアスタッフにとっては業務が増えるリスク

があるので誰も得をしないのに、『禁止』なのです。

『利用者の人権や尊厳という建前上の手かせ足かせ』
に縛られているのは、現場スタッフと言っても過言ではないでしょう。

家庭だったら4点柵をしようが腰ベルトをしようが鍵をかけようがエプロンをしようが問題はありません。

しかし、『赤の他人である介護職員』がおいそれと「身体拘束」をしてはいけませんよ、ということなのです。

赤の他人である介護職員に
・利用者の人生に寄り添ったケア
・家庭的なケア

を追求させる方針には矛盾が生じてきています。

現場スタッフを縛り付け、業務を押し付ける前に、政策や施策や方針の矛盾を解消していくことの方が先ではないでしょうか。

本当に『拘束』されているのは、
『介護職員の日常業務や労働環境や生活の質に関わる処遇と人権』なのです。