ユニットケアは「既に破綻している空想理論」である理由をわかりやすく解説

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介護施設は従来の多床棟相部屋型から、ユニット個室型が推奨・推進されています。

ユニット型にすることで、
・個別ケア
・家庭的な雰囲気の中で生活
・なじみの関係の構築
・生活の質(QOL)の向上

『実現できるはず』という国や行政や業界が理想を声高に叫び導入されました。

『ユニットケアは従来型の多床棟・多人数ケアのアンチテーゼとして開始された』
という経緯があります。
ですから業界内では、
・多床棟・多人数ケアは古い、ユニットケアは新しい
・ユニットケアの推進は素晴らしい
・利用者の幸せはユニットケアにあり

という風潮があります。

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◆ユニットケアはシフトが組めない

新しくて素晴らしくて幸せなはずの『ユニットケア』ですが、実際は『既に破綻』しています。

利用者:職員の人数は3人:1人が配置基準になっているので、1つのユニット(利用者10人)に対して4人の職員がいなくてはいけません。
「え?1ユニット20人では?」
「いつも20人の利用者をみているって言っているのでは?」

と思われるかもしれませんが、
ユニット型施設では2つのユニットがドア1枚で隣接しています。

お互いを『協力ユニット』と呼んでいますが、
実際は職員も利用者もごちゃまぜで対応しています。
つまり、職員は2つのユニットに所属し20人のケアをしています。
いつも『20人のケアをしている』と言っていたのはそういうカラクリだったのです。

そうなると、利用者と職員の比率は、
20人:7人
ということになり、7人の職員が必要になります。
しかし、もちろん公休もありますし、有給も取りたいです。
体調不良や突発的な事故や身内の不幸などがあれば、急に休まなければならなくなることもあります。

ですから所属が7人では何かあった時や突発的な事態に対応できないので、9人とか10人の所属職員が必要になってきます。

私の施設(特養)の場合、そういう協力ユニットが全部で6つありますので、単純に考えて約60人の介護職員が在籍していてギリギリ状態なのですが、正常に実働できる職員は50人弱ほどしかいません。

半日だけのパートさんや残業を駆使してなんとか回しているのが現状なのです。
これが、多床棟なら例えば1フロア30人の利用者に対して20人の所属職員がいれば、突発的な欠勤があっても他のフロアから応援に回しやすいですし、余裕のある勤務が組めます。

余裕のある勤務は余裕のあるケアに繋がります。

利用者1人1人を大切にするために『個別ケア』を推進してきたのに、結局はユニット型では職員のシフトが組めず、
『逆に多床棟ケアより劣悪な多人数ケアに陥ってしまっている』
という現状があり、利用者のQOLを向上させるどころか、
『職員も利用者も不幸になる』
破綻したケア方法だと言っても過言ではありません。

そもそも、いつまでも『協力ユニット』で勤務をしなければいけない状態が続いている時点で『ユニットケア』ではないのです。

◆ユニットケアで家庭的な個別ケアは不可能

『家庭的な雰囲気』とか『個別のケア』を目指してはいるものの、前述したように、人材不足と勤務表が組めない状況に追い込まれてしまうのが今のユニットケアなので、
・利用者とマンツーマンでゆっくりと傾聴する時間を作り、訴えや希望を聞いたり心に寄り添う
・レクリエーションを利用者個々の能力や趣きに合わせる

ということはとてもハードルが高くなります。

そもそも、一番家庭的で個別ケアが可能なのが
『自宅で家族が介護する』
ことなのですが、
何らかの理由で家庭で介護が出来ないから施設に預けているのです。
その時点で、
・介護者がアカの他人の職員になります。
・自宅ではマンツーマンだった介護が、1人:3人の濃度が薄まったケアになります。

既にここで2つの矛盾が出てきてしまっています。

本当に個別ケアなどという高尚なケアを推進・実施していこうとするならば、
利用者と職員の比率は
1人:1人
の基準にすべきです。

しかしそれには『人材不足』という大きな問題があり不可能なのです。
国や行政や業界は、
『人材不足』で不可能なことを、
現場の職員には
・個別ケアの推進
・目指すべきケア
・利用者の幸せの追求

などと言って押し付けているだけなのですから、実現するはずがありません。

事業所も人材不足によって、
職員が辞めていくたびにユニット編成や異動をします。
半年に1回の頻度だったり、
最近は3か月に1回くらいのペースで異動があります。
そうなってくると、
・家庭的な雰囲気
・なじみの関係

だなんて、とても無理です。

3か月に1回、知らない職員が知らない利用者をケアするのです。
職員も大変ですが、利用者も大変です。

職員になじみ、やっと自分なりのルーティーンが確立できて、安定して心穏やかに生活していたのに、度々職員が変わっていくのです。

利用者の処遇や対応方法は情報の共有や申し送りである程度されているとしても、細部の情報まで伝えていくのはなかなか難しいですし、職員という人間そのものが変わってしまうのですから落ち着いて生活できません。

事業所は、
『推進していること』と『やっていること』が明らかに矛盾しているのです。

◆破綻したユニットケアの今後

国や行政や事業所が推進している『ユニットケア』が既に破綻している空想理論であることは、ご理解頂けたかと思います。

「人員が増えればユニットケアも可能になるのでは?」
と思われる人もいらっしゃるかもしれませんが、
本当に本来の意味でのユニットケアを実現したかったら、
『利用者:職員』を『1人:1人』にしなければなりません。

つまり、10人の利用者に10人の職員が必要で、
100人の利用者に100人の職員が必要なのです。

まず、そこまでの人数の職員を集めるのがほぼ不可能ですし、仮に出来たとしても、財源が完全に破綻します(既に破綻していると言っても過言ではありませんが)。

どう足掻いても実現しないのが『ユニットケア』なのです。

しかし、現在もその空想理論の中で働いているスタッフがいて、生活している利用者がいます。

『理想や空想を現実にする』
と言えば聞こえは良いですが、
職員と利用者の犠牲の上でギリギリ首の皮一枚で繋がっているのが現状です。

『多床棟(従来型)に戻す』
という手もありかと思います。
しかし、ハード面(建物形態)が既にユニット型の施設では、改修工事や建て替え工事などが必要になり、現実問題として相当困難と言えるでしょう。

やはり、一番手っ取り早く確実なのが、
『人材の確保』
ではないでしょうか。

そして、人材確保をするためには、
『処遇の改善』
が絶対的に必要です。

『介護保険制度』は3年に1回改定されることになっています。
次の3年目の改定が来年の平成30年(2018年)に当たります。
介護報酬が上向くかどうかはその改定に掛かっています。
一部、報道では「上向きの方針」という情報が流れていましたが、決定するまでは目が離せません。

そして上だとか下という2つの選択肢だけでなく、
中身をもっと精査し、本当に意味のある改定がされることを願っています。

介護報酬が上がっても、現場職員まで行き届かなければ意味がありませんし、
・ユニットケアは今後どうしていくのか
・介護職員の人材確保の具体的方法
・人員配置などを遵守していない事業所への厳格な法整備
・利用者の幸せを追求するためには本当に何が必要なのか

という所まで突き詰めて検討して欲しいと思います。

コメント

  1. デイちゃん より:

    私は多床型とユニット、どちらも経験しましたが、ユニットはなんか仕事の効率が悪いって感じでしたね。
    多床型だと、良くも悪くも、多い利用者を多いスタッフでガバーッと片付けるみたいな感じだから、他のスタッフと力をあわせて時間内にやれたときに達成感がありました。
    ユニットって、少人数の利用者を少人数というかほぼ一人で対応するって感じじゃないですか。
    消耗戦というか、じりじりと苦しみが続くみたいな感じで、何か性に合わなかった。
    入浴でも、多床型なら、誘導が利用者を連れてきたら、脱がすスタッフ、洗ってつけるスタッフ、また着せるスタッフ、部屋に戻すスタッフって感じで、流れ作業なんですよね。
    二人介助でもスタッフがすぐいるから、「ごめん、ちょっと手伝って」って言えるし。
    でもユニットだと、スタッフが一人で利用者一人を連れて行って、着脱、洗身など全部一人で行う。
    だから、利用者が数人入浴するだけでも、めちゃ時間がかかるし。
    「二人介助で移乗」とか言われても、え?スタッフいませんけど・・・って感じだし。
    あと新人が入った時にユニットは困りますね。
    多床型なら、新人は新人向けの簡単なところからしてもらってって感じで入れられる。
    でも、ユニットだと、仕事全部が一人でできないと仕事にならないから、まずは簡単なとこだけってわけにはいかない。
    入浴だと、多床型はまず簡単な髪をかわかすところからね~って言えるけど、ユニットは重度の拘縮してる人の着脱からしなきゃいけないし。
    体重ある人の移乗とか、いきなり新人には無理だしね。でもしてもらわないと・・・困るよね。
    そもそも特養って今、介護3以上の重度ばっかりでしょう。
    実質介護5ばっかりだし。
    そんなの、一通りできるようになるまで、めちゃ時間がかかるよね。その分他のスタッフの負担が増えるし、新人さんもつらくてやめちゃいそう。
    ま、施設は改築できないから、ユニットのままやるとしても、今の倍は人員がいるんじゃないですか。
    日中の配置が利用者:スタッフ=2.5:1とか。
    看取り実施してるとことか、利用者がいつ死ぬかわからないのに、夜勤一人じゃ無理でしょう。なので看取りするなら、夜勤帯も看護師必要とか。
    入居施設はどこも崩壊してるみたいで、スタッフがいなくて、空きがあっても入居者を入居させられないみたいですね。
    その原因の一端は、ユニット方式にあるんでしょうか。

  2. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    うぉっと(笑)まったくもってその通りですね。ブログ記事に足したいくらい的を得た内容だと思います。
    ユニットケアだからこそダメになってしまった部分は多いですね。ユニットケアがダメなのではなくて、人材も集まらない、集まってもすぐ辞めていく状況の中で実施スタートしてしまったことが一番悪なのだと思います。

  3. デイちゃん より:

    そのユニット、オムツカートもなくて。
    オムツは随時交換って言うんだけど、寝たきりばっかりなのに・・・しかも排泄パターンって、来たばっかのスタッフにはわかんないじゃん。
    それよりも、定時に確認して、間違いなく全員見れた方がよくないかな?って思ったんですよね。
    多床室だと、何時から何時までに何人オムツ交換ってタイムスケジュールが決まってた。もちろんオムツカート使用。
    オムツ交換は2人でまわるんだけど、仲のいいスタッフがいて、私はその人と2人でやるとめちゃ早くできたんです。
    そういう風に、2人で協力することで、各々1人以上の力が出て、1+1が2以上になるから、早く作業ができたんじゃないかと。
    ある時、またその人とオムツ交換が一緒で、その人が「今日〇〇さん(私)、オムツ?」と言われて「そうだよ」と言うと、「ヨシッ!」と言ったので、笑いました。
    「またオムツか・・・」じゃなくて、「この人とやれば絶対終わるわ」って思えたら、精神的な負担もなくなりますしね。
    「この人、昨日から下痢してるみたいだから」とか情報交換もできるし。
    新人の人も、ベテランと2人でまわれば、練習できるしね。
    もちろん、いいスタッフばかりじゃないから、一人でやった方がマシやわってこともあるかもしれないけど。
    多床室のよいところと、ユニット型のよいところ(はちょっとわからなかったけど)を、どちらも取り入れられたらいいですけどね。

  4. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    そうですよね。ユニットケアの「その人らしさ」の方針が職員だけでなく利用者にも押し付けになっていて、国や事業所の独りよがりのケアだと言えますね。
    このままユニットケアを推し進めていくのなら『空想科学会社』の社員と同等以上の給料を支払ってもらわないと割に合いませんね。

  5. めど立てたい人 より:

    懐古主義と言われればぐうの音も出ませんが。
    正直、従来型を知っている身としては、ユニット(ケア)(笑)型よりも、より利用者とそして、そして職員にとっても双方winwinなきがします。
    不満をあげたらきりがないですが、どこでも同じかなと思うことに、「夕食後に寝かせてやらない」逆流性は抜きにしても、車椅子やテーブルに突っ伏してますからね。
    それでも・・・
    ただ、もう従来型って作られていかないとも聞きます。そして、洗脳教育みたいなものが勤め先でありました。勤め先=ユニット(ケア)が初めての介護経験になる職員がその教育を受けて、従来型をおかしいと思ってしまったようで・・・
    ユニットケアは理想と現実は違うと言う以前に、ユニットケアの言っていることを100%実現できたとしてもその時点でユニットケアではないという根本の破綻があるのですがね。一例として、寮生活か豚箱、シェアハウスの経験さえない高齢者を、友達とも家族でさえない赤の他人を寄せ集めて家庭的な雰囲気(笑)…それなんてブラック企業?

  6. 山嵐 より:

    >めど立てたい人さん
    そうですよね。食事も皆一緒じゃなくても、利用者が食べたい時間に食べて貰う、とか既に不可能ですし、ホテルでも寮でも集団生活の場では食事の時間は決まっています。ユニットはホテルや寮ではなく『家』『家庭』なんですよ、というのが常套文句ですが、家庭でも滅茶苦茶な時間にごはんを食べられたら家族が困ります。家庭でも出来ないことを介護職員にやらせようとしている時点で破綻しています。
    従来型はもう建設されていませんね。
    今後、国や業界がこの破綻した状況をどう捉え、どう動いていくのかが大変重要だと思います。

  7. デイちゃん より:

    ユニットケアの話になると、いつも従来型のベルトコンベアー入浴が悪いことの最たる例としてあげられて、「あんなのは利用者を人間扱いしてないからダメだ」「芋洗いだ」などと言われます。
    で、「ユニットケアでは、入居者一人一人ゆっくりと入浴してもらう。スタッフもその方が余裕があるし、事故もおきない。」などと結論付ける。大ウソ!
    だって特養に入ってる人ってさ、介護5の最強重度しかいないよね?
    自分一人で個浴で入れる人なんていないよね?そんな人介護2以下だよね?
    寝たきり重度だったら、スタッフ数人で協力して流れ作業でやった方が、仕事は早いし事故も起きにくいよね?
    ねたきりじゃなくて歩行ができても便失禁や暴力があったりとか、スタッフ一人で対応するの大変だよね?
    大変だから介護5なんだよね?
    ・・・と思います。
    そうそう、グループホームは、入居者一人一人ゆっくりと入浴する・・・な感じなんですよ。
    基本自立してる認知症しかいないので、スタッフは声かけ・見守りのみ。
    私の父親のグループホームは、一日おきに入浴しています。
    で失禁とか汚染があったら、その都度シャワー浴してる。
    入居施設で週に4日の入浴・・・ちょっと驚愕ですよね。それユニット型特養でしようと思ったら・・・100%不可能でしょう。
    ユニットケアって、重度になる前の軽度の比較的自立してる認知症の方とかに対しては、実施可能かもしれませんね。
    グルホや有料は、ユニットケアですけど、ある程度機能してますよね。
    ただ、グルホや有料も、経営者がアホで超重度入れ始めたら・・・すぐ崩壊しますけど。

  8. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    全くもっておっしゃる通りだと思います。
    とにかく現場はいつも修羅場で、ユニットケアだとか個別ケアだとか言っていられないのが現状です。
    理想を追い求めるのは大切ですが、誰もが『既に破綻している』と感じているものをゴリゴリ押していくのもどうかしていますね。

  9. 大会 より:

    私のところはずっと2人勤務ですよ
    20人に二人で毎日が憂鬱ですよ

  10. 山嵐 より:

    >大会さん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    2人って日中ですか?
    相当悲惨な状態、環境ですね。
    職員も利用者も不幸の真っただ中と言っても過言ではありませんね。