利用者をシーツで縛らざるを得ない状況に追い込まれる(上)

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さて、当ブログも200記事を超え、
1日のアクセスが2500~4000PVまで成長しました。
これも読者の皆様のお陰でございます。
改めてお礼申し上げます。
毎日更新しておりますが、
正直、ネタに困る時もあります。
実はまだまだ『介護施設の闇』の部分には触れきれておらず、書きたいと思う事はあるものの、
・守秘義務
・プライバシーの問題

があり、書いてもいいのか書かない方がいいのか判断に迷う事柄も多々あります。
創作やフィクションなら迷わず書けるのですが、
・真実
・事実
・現実
・ノンフィクション
・実在

だからこそ書きにくい事が多いのです。
しかし、その部分に触れていかなければ、
『介護業界の闇の本質に迫れない』
のもまた事実なのです。

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◆追い詰められた介護職員

ある利用者は重度の認知症があり、1日中、朝から晩まで歩き回っていました。
しかし、足元が不安定な為、よく転倒します。
歩き回って異食もします。
【異食の参考記事】
家庭的な雰囲気のはずの生活スペースが殺風景な理由は?
転倒や異食をするたびに、
介護職員は事故報告書やインシデントレポートを書き、看護師や家族などに連絡・報告をしたりする必要があり、たった1人の利用者の対応をするだけで膨大な労力を消費します。
それが『介護の仕事だ』と言ってしまえばそれまでなのですが、人材不足もあり付きっきりの介護が出来ない以上、対応策がありません。
日中はまだ数名の介護職員や看護師や事務職員などがいるので、何とか対応できるものの、夜勤は職員が1人なので、どうすることもできません。
その利用者に付きっきりでは、他の利用者の対応は出来ませんし、目を離すと転倒していたり、石鹸や雑巾やパッドを千切って口に入れていたりします。
生活室に物を置いていなくても、押し入れや戸棚や引き出しや冷蔵庫を開け、手あたり次第、異食します。
一晩に何回も何回もそういうアクシデントが発生し、介護職員は徐々に追い詰められていきます。
「夜勤やりたくない」
「夜勤怖い」
「夜勤前になると吐き気が止まらない」
「夜勤前になると鬱症状が出る」

そんな日々が続いたある日、
リーダー会議でそのユニットのリーダーから
・職員の限界が近いこと
・ヘルプ、SOSの要請

の発言がありました。
「もう限界です」
「どうすることも出来ません」
「何か対応をお願いします」

それを聞いた当時の主任は、
「まあまあ…そうだよね。何か考えなきゃね」
と言ったものの、何も対応をしませんでした。
現場の介護職員たちは、会社にも上司にも見捨てられた気持ちになりました。
『こうなったら自分たちで何とかするしかない』
身体拘束は虐待になるので、絶対にしてはいけませんが、介護職員は相当追い詰められていました。
夜間、その利用者を車椅子に座らせ、
後ろを壁につけ、前にテーブルを置きました。
『せめて他の利用者の排泄介助や対応をしている時だけでも…』
という苦肉の策でしたが、その利用者はテーブルを手で押しのけ、知らぬ間に歩き回り転倒し頭から出血をしていました。
頭部は毛細血管が多いので、少しの傷でも多量の出血をします。
救急搬送となり、二針縫合され帰ってきました。
毎晩、そういうアクシデントが発生してしまい、益々介護職員は追い詰められていきました。

◆最後の手段

介護職員のことなど誰も助けてはくれませんので、自分たちで何か対策を講じなければなりません。
最後の手段として、
その利用者を車椅子に座らせ、
シーツで車椅子と利用者を縛ると完全に動けなくなりました。
シーツにした理由は、
・極力痛くないように
・縛った痕が残らないように
・ユニット内にある身近なもの

という理由なのだと思われます。
完全に身体拘束であり、
虐待であり、
犯罪になるかもしれません。
ユニット内の介護職員の間では
『暗黙の了解』
ということになっていたようです。
確かに、ある日から突然、夜間の事故が著しく減りました。
倫理的にも
道徳的にも
介護職員としても
人間としても
絶対にやってはいけない行為です。
しかし、それほどまでに追い詰められてしまった介護職員。
追い詰めてしまった上司、事業所。
何が良くて何が悪いのでしょうか。
利用者に対しても
家族に対しても
世間様に対しても
自分に対しても
「申し訳ない、申し訳ない。ごめんなさい、ごめんなさい…」
と思いながら縛っていた職員の事を考えると胸が痛いです。
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◆会社にバレても闇は深い

『暗黙の了解』
とは言っても良くないことをしているので、罪悪感に苛まれ耐えきれなくなる職員も出てきます。
ある日、そのユニットの某職員が、
当時の特養の相談員に打ち明けました。
「実は夜間に利用者をシーツで縛っている」
「こんな事は本当はやりたくない」
「今後どうしたら良いのだろう」

その告白をキッカケに、
その事実は瞬く間に会社内に広がりました。
「えらいことだ、大変なことをしてくれた」
「あってはならない虐待だ」
「すぐに何かしらの対応を」

ここまできて、やっと会社が動き出しました。
これで介護職員が救われるはずだったのですが、やはり虐待に関わった当事者たちは上司や経営陣に呼び出されて事情聴取を受けていました。
「辞めてお詫び致します」
「すいませんでした、すいませんでした」

誰一人『良かれ』と思ってやっていた職員などいません。
それらの職員に対して会社が放ったセリフは、
「辞めなくていいから、これからはもっと身を粉にして働け」
「給料貰えてるだけでもありがたいと思え」

という血も涙もない内容だったようです。
その言葉に対して心が折れてしまった職員もいます。
その後、『深夜勤』という全ユニットに対してフリーの夜勤職員が1名配備されることになりました。
深夜勤者が不穏な利用者や歩き回る利用者を付きっきりで介護するのです。
何故、もっと早くその対応が出来なかったのか。
落ち度があったのはどちらなのか。
紆余曲折あったものの、
ひとつの闇が解決したように見えました。
しかし、全くもって不可解な事態が起こりました。
虐待事件が発覚したあと、
・会社はもう二度とその事を口にしなくなった
・被害利用者の家族に連絡・報告した形跡がない
・行政に報告した形跡がない

闇を闇で覆い隠し
無かったことにしてしまうつもりなのでしょうか。
氷山の一角さえ照らされることのない、
『排他的隠蔽体質な業界』そのものと言えるでしょう。
・介護職員が浅はかだった
・介護職員が無能だった
・介護職員のスタンドプレー
・だから介護職員は低収入で身を粉にして働け

という風潮が更に強くなり、
闇が照らされることはなく、
社内で更なる逆風が吹き荒れたのでした。
そしてそのまま何事も無かったかのように3年という月日が流れました。
(つづく)
【続編】
利用者をシーツで縛らざるを得ない状況に追い込まれる(下)


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コメント

  1. デイちゃん より:

    読んでいて、胸が痛くなりました。その利用者の対応をしたスタッフの方々、本当に大変でしたね・・・。
    いましたよ・・・そんな利用者。
    昔、私のデイにいたバカ管理者は、とにかくどんなとんでもない利用者も「売り上げのため」と受け入れてました。
    本当のバカ。自分は受け入れるだけで、何もしないからね。(笑)
    歩行困難なのに一日中徘徊してる利用者。
    ちょっと座っときません?とスタッフが言っても、数分後には動き出し、歩けないので床をはいまわってる!!
    「〇〇しませんか?」など声かけするも、効果なく徘徊は続き、結局、スタッフが一日中はりついてました。
    が、急にズボン下して小便するので、一人ではどうしようもないという。
    その利用者は家に帰るわけなんですけど、家でも徘徊しまくりで。
    どうも家族はほったらかしにしてるみたいで、近所を徘徊して転びまくって傷だらけになって帰ってくる・・・って、家族もおかしくない?
    その次に来たときは、その利用者、人格が荒廃していて、暴力がひどい。
    声かけすると、こぶしがとんでくる。
    入浴させるため服をぬがそうとすると蹴りが!
    私は、ズボンをぬがそうとして、手を利用者の足から離した瞬間に、蹴りが喉元に入りました。
    介助をするためには、スタッフは利用者から手を離さないといけないんですが、手を離すと利用者は体がフリーになるから、当然暴力しますよね。
    管理者も一回殴られてほしかったですね。(笑)
    その利用者は結局、地元民ならだれでも知ってる有名な精神病院に入りました。そして、一か月後に死亡しました。
    その徘徊・異食が止まらない人、きっと特養ではなく、精神病院に入院すべきだったのでは。
    たぶんはじめに事故が起きた時点で、専門的な医療が必要でしょうと判断し、精神病院を受診するべきだったと思います。
    いやいや、入居の判断の段階ですべきでした・・ね。
    特養は生活の場であって、精神病の方の治療をするところではないはず。
    精神病院で医療的なアプローチを試みて、共同生活可能って診断されてから特養に入居すべきですね。
    何か間違っていますね。
    う~ん、私ならあえて放置して、とんでもない事故にしちゃうかな・・・大腿骨骨折とか。
    未必の故意で、利用者が動けないようにしちゃう・・・とか言ったらいけないけど。
    「〇〇さんの介助をしていたら、転倒していたんです」とか、正当な理由は用意して。
    でも結局は責任を押し付けられちゃいそう。
    利用者がいなくなったら、施設は平和になるかもしれませんが。
    管理人様の施設のスタッフは、私のような悪魔はいなかったってことですよ。
    そういう心優しいまっとうなスタッフが、おいつめられるんです、介護の仕事って・・・。

  2. ふう より:

    山嵐さんお仕事お疲れさまです。
    この記事を読んで私のような遠距離の家族や身寄りのない人は尚更何かあっても解らないのかな?と思いました。
    でも私の親がお世話になってる施設では夜勤の職員さんやはり少なくとても大変だろうなと想像てきます。
    友人にグルホで働いている人がいるので聞いたことがあるのですが、内部でおこったミスはそのまま蓋をして何事も無かったことに。
    大事でなければあるそうです。
    親が認知症となり施設に入りこの世界をすこしだけ知ってから気づいたのは、他のご家族は殆ど面会に来ない、年に数回の模様し物にも来ないのです。
    いても一家族か二家族です。
    確かに会話も出来なくなる、笑顔や意思表示も出来なくなる、何をしていいか解らない。寝ているため行ってもとんぼ返りの時もありました。
    グルホの時も特養もどちらも同じでした。
    他のご家族は地元の方ばかり、遠距離である我が家が通年通して一番来ていると言われました。
    今年の敬老会、夏祭り、やはり私だけ。
    職員さんが綺麗に飾り付けして食べ物は質素でしたが、何だか虚しいですね。
    私だってお世話になってる側同じ身の上。
    しかしこんなにも無関心なものかと。
    会話はでけないけれど嬉しそうに笑顔で手を叩きながら催し物を見ている方たちのご家族はどんな思いなんだろうと思いました。
    色々個々に事情はあると思います。
    心情的な物ですが模様しものをされた方の中に親と同世代のグループがいました。
    皆さん元気でしっかりとして。
    見ていて自然と目が潤みました。笑
    介護問題、される側する側 どちらも辛いですね。
    介護しさんの負担を軽くする足や腰に装着するマシーンのような物、あれは実現化されてるようですがどうなんですかね。

  3. デイちゃん より:

    連投すいません。
    介護保険制度が始まってから、重篤な精神疾患がある高齢者を「認知症高齢者」とひとくくりにして、介護施設に送り込むのが、横行してると思います。
    そしてそういう精神病患者を、売り上げのためと、ホイホイ受け入れる介護施設の管理者。
    で、「薬は飲ませないで、身体拘束もしないで、かかわりでなんとかしてください」と、スタッフに言うバカ管理者。
    かかわりでなんとかなるんだったらさ、向精神薬とか世の中に存在してないんだよ。
    精神科医なんて、必要ないんだよ。
    精神病院だって、いらないんだよ。
    なんで精神病院がた~くさんあるか知ってる?
    精神疾患持ってる人がどのくらいの割合いるか知ってる?
    そういう人達の対応、かかわりで何とかできるとでも思ってるの?
    さっき書いた利用者は、はじめ、要介護2でデイに送り込まれてきました。
    で、その後結局、精神病院に措置入院したわけなんですけど。
    つまり、精神病院に措置入院するような人を、わざわざデイに連れてきてたんですね、うちのバカ管理者は。
    精神病患者を無責任に受け入れ、現場に丸投げしただけ。大バカ。
    家族的には、いきなり精神病院となったら、やっぱり世間体が悪いわと思ったのかもしれませんが、でも冷静かつ客観的な見解を伝えるのもケアマネとか管理者の仕事だよね。
    「う~ん、デイは難しいかも」「まずは医師の診察を受けてみては?」って。

  4. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    こんばんは~
    返信遅くなり申し訳ございません。
    「終の棲家」と「精神病院」の棲み分けがハッキリと線引きされていないのが現状ですね。
    「家族(又は利用者)の意向」が優先される現状ではなかなか難しい判断になりますが、「施設の意向」が優先される業界では「福祉として成り立たない」という悪しき慣習の集大成と言えるのではないでしょうか。
    ちなみに、その利用者は足を骨折しても構わず歩き転倒し、歩けないとほふく前進で移動していました。
    重度になると痛覚もなくなるんですね。

  5. 山嵐 より:

    >ふうさん
    こんばんは~
    返信遅くなり申し訳ございません。
    家族の想いや考え方や対応は人それぞれ違っていますね。
    定期的に面会に来られる家族や1回も面会に来られない家族、色々いらっしゃります。
    些細な事でも連絡が欲しい家族もいれば不要な家族もいます。
    「想いや考え方」の違い以外に「受け止め方」の違いがあるのだと思います。
    認知症の親への受け止め方は、
    『ショック・戸惑い』→『怒り・否認』→『割り切り・諦め』→『受容』
    の流れがあると言われています。
    その家族がどの段階まで受け止められているかにもよるのだろうと思います。
    介護ロボットとか負担軽減の装着型マシンの導入は未だ進んでいる実感はありません。トライアンドエラーが続いているのだと思われます。

  6. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    2つ目のコメントへの返信です^^
    万が一、「関わり合い」や「寄り添い」や「ケア技術」で改善したり解決するのだとしたら、介護士って医者よりも心理カウンセラーよりも高尚で高度な技術があるのです。
    そうだとするならば、それに見合う対価を貰うのは当然ですね。医者より高収入であるべきです。

  7. デイちゃん より:

    昔いた若年性認知症の利用者は、椅子に座ってたら突然ミサイルのようにびょーんと飛び出すんです。
    スタッフが一日中横についていたんだけど、隣の利用者に話しかけられてそっちに向いた瞬間、その若年性認知症の人がびょーんって椅子から飛んで行って。
    そんな人、どうすりゃよかったんでしょうねえ。
    グルホで一日中動き回り叫びまくってる人がいたんですけど、医師からはリスパダールを服用するように言われてるのに、それを「かかわりで何とかしてください」というアホなホーム長。
    だったら、あんたが24時間ずっと見てれば?って感じでしたね。
    確かに、介護職は、医者以上のお給料をもらわなきゃいけない。
    とりあえず、月給100万くらいにしときます?(笑)
    そうそう、そんなとんでもない人を穏やかにする方法って・・・あのユマニチュードとかならできるんでしょうか。(笑)
    介護って魔法じゃないのにね。(笑)

  8. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    リスパダールはよく処方される精神病薬ですね。
    服用している利用者もいますが、効果はイマイチわかりません。
    ユマニチュードね…真面目に考えられた高尚で画期的な理論なんでしょうが…。
    まずは実践できる環境と人員を確保する努力をする方が先だと思います。
    私に言わせれば砂上の楼閣ですね。
    介護士の月給100万円ありですね(笑)

  9. デイちゃん より:

    リスパ結構ききますよ。リスペリドン。叫びまくってた利用者に飲ましたら、し~ん・・・って感じで。
    統合失調症のスタッフも飲んでました。(苦笑)
    グラマリールも多いかも。脳梗塞や脳出血になって怒りっぽくなった人が、飲むと、「あれ?あの人、怒らなくなった・・・」みたいなね。
    あとデパスは、内科でもすぐ出してくれるみたい。今は向精神薬に指定されましたが・・・。
    これも不穏になる人が飲んだら、「あれ?今日落ち着いてるね?」って感じで。
    でも抑肝散とか、漢方は効きませんね・・・。
    私のデイ、落ち着くお薬飲んでる人が多くて。デイなのに。(笑)
    でもそれだけ精神疾患がある人が多い・・ということなのかも。
    いやいや、会社が利用者を適当に入れすぎなんだと思います。

  10. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    リスペリドンはリスパダールのジェネリックかな。
    頓服で服用していたからなのか、あまり効果は感じませんでしたが、定期薬なら効くのかもしれませんね。
    漢方薬は確かにアテになりませんね。