「オムツゼロに厚労省が高報酬」というエゴイストの方針

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以前から
『オムツゼロ運動』
『オムツはずし』
『脱オムツ』

ということを目指したケアは素晴らしいという風潮がありました。
利用者の自立支援を目的としたものです。
それ以外にも、
『オムツ代が削減できる』
という隠れたメリットもあるようです。

介護「脱おむつ」支援の事業者は高報酬に 厚労省が方針
厚生労働省は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでおむつをしている入居者がおむつなしで暮らせるように支援する施設事業者に対し、介護報酬を手厚くする方針を固めた。来年度の報酬改定で導入する高齢者の「自立支援」を促す仕組みの具体策だ。
まず、おむつを使う入居者に「ポータブルトイレをベッド脇に置けば自分でできる」などの目標を立てる。そして、実現に向けての支援計画を作り、計画を実施した場合に報酬を加算する方針だ。事業者が加算を得るために入居者に強要することを防ぐため、医者がおむつを外せると判断し、本人が望む場合に加算対象を限定する。

引用元:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASKCS5GN2KCSUTFK00F.html

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◆オムツゼロの方針は介護負担が増加する

この方針によってメリットがあるのは、
・国や行政
・事業所
・一部の利用者

になります。
「より良いケアを提供するのが介護職員としての義務・責務」
「オムツをはずしてトイレで排泄が出来ることこそ素晴らしい」

という押し付け合いが始まります。
もちろん、ある一定の利用者の場合、
オムツをはずすことも出来るでしょう。
しかし特養の場合、
入所者は要介護3以上です。
寝たきりの利用者もいれば
重度の認知症の利用者もいます。
ご高齢になれば、
『切迫性尿失禁』
の利用者も多くなります。
切迫性尿失禁は、
前立腺肥大症や尿路感染症などの病気の場合もありますが、特に病気がなくても加齢とともに増えていきます。
そういった利用者の
『オムツをはずして布パンツにする』
ということは相当な介護負担を強いられます。
・利用者の排泄間隔を把握する
・失敗した場合は毎回更衣
・立位が取れない利用者を抱えてトイレに座らせる
・何度も移乗介助を繰り返すため腰痛のリスク増大

最低でもそれだけの業務とリスクが増えます。
「介護職員なんだからそういう業務をして当然」
という声も聞こえてきそうですが、
人員不足の中、現状の業務でいっぱいいっぱいなのです。
人員も補充せず、
給料も加算せず、
業務だけ増やすのは
図々しいの一言です。

以前、
「布団を何度も汚された」ので入所者を殺害したニチイの事件
の記事を書きましたが、
オムツゼロ推進によって、
今後もっとシーツを汚す利用者が急増することでしょう。
極論ですが、そうなれば
『今後益々、介護事件が多発する』
という推測が出来ます。
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◆利用者にとって本当に良いのか

『オムツ』と言うと
アテントのようなテープタイプのものを思い浮かべるかもしれませんが、
『おむつ』は家庭と介護現場で認識の違いがあるのをご存じですか?
の記事で書いたように、
紙パンツタイプのリハビリパンツもオムツになります。
point01.jpg
そうなると、
『オムツゼロ』を達成するためには、
紙パンツやリハビリパンツも無くさなければなりません。
なんでもかんでも一緒くたに
『オムツゼロ推進』
という傲慢な考え方を押し付けてきますが、
本当に利用者にとって良いのでしょうか?
もちろん、紙パンツやオムツは蒸れますし、
履き心地も良いものではありません。
履かないで済むなら履かない方が良いでしょう。
しかし、オムツゼロを推進するならば、
・日中、人前でお漏らしをしてしまうかもしれない不安感
・お漏らしをしてしまった時の羞恥心
・寝たきりなのに何度もトイレに座らされる精神的・身体的苦痛

を利用者に与えてしまう可能性があります。
ただ単純にエゴイストのように
『オムツゼロ推進!』
と叫ぶのでは結局誰が得をするのかわかりません。
・適材適所
・場合に応じて
・利用者の状態に応じて
・事業所の職員配置に応じて

もっと『オツムを働かせて』考えていく必要があるのではないでしょうか。

◆高加算をつければ方針ではなく義務化する

『医者がおむつを外せると判断し、本人が望む場合に加算対象を限定する』
との注釈がありますが、
医師(主治医)にも色んな考え方の人がいて、
専門分野も異なり
利用者の普段の様子を知らないという状況の中で、
本当に全国一律で整合性の保たれた統一した判断が出来るのか甚だ疑問です。
また、認知症の利用者が多い状況の中で、
『本人が望む』という意思確認は一体どうやって行うのでしょうか。
利用者の状態や
職員の配置状況に応じて
オムツゼロを推進していくのならわかるのですが、現状では
『とにもかくにもオムツゼロが素晴らしい』
『だから高い加算をつけてやる』

という方針です。
「いや、だからあくまで方針なんだから義務ではないでしょ」
と言われるかもしれませんが、
国が高加算を付ける時点で、
事業所もその方針に向かって動くに決まっています。
国や行政の方針に反対したり、
反目する事業所が生き残ることは難しいのです。
その時点で、
『方針=義務』
という圧力に変わります。
現状のままでは、
過剰労働で腰や精神を痛める介護職員が増加し
辞めていく職員も増加し
益々人員不足に拍車が掛かり、
排泄物まみれの職場が出来上がるのではないでしょうか。
出来ることと出来ないことを区別し、
まずは環境を整え処遇を改善し、
利用者の状態や状況に応じた
意味のある方針を示して頂くよう心から願っております。


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コメント

  1. めど立てたい人 より:

    勤務先がこれしてます。ただ、開所当初かららしいですが。
    やたらにオムツを敵視してますよね。悪いもの、不快なもの等々。
    でも、結局慣れですよね。履き慣れないから不快なだけで、慣れれば何も感じない。
    あるCMに「いつもトイレの事を考えていたくない」(介護用品)、「ちょいモレしないか心配」(女性用品)と言ったフレーズがありました。記事中にもあるこの視点が大きく抜けてますよね。
    それに、そもそも介護対象は排尿(排便)がしたいのであって、トイレに行きたい訳ではない。もっと言えば、排尿さえしたくなですよね…これが矛盾していないとわかる人は現場の人間だけでしょうか。
    ほんと福祉は暴力ですね。福祉オ○○○はやめてほしいと思います。しかし、気持ち良いのでしょうね。それこそ猿みたいにやって、そんな猿が福祉のトップとかにのさばるンだからホント
    ラク技ってご存じですか?この業界で流行っているそうですね。
    これも本記事と同じで、従来の抱えが体に悪いという視点でいっています。
    しかし、所詮、1:1の人体介護と言う意味では抱えと大差がありません。たしか別記事で管理人さんもチラッと触れてたかと思います。
    もう勤務先だめだ。ブラック企業がよく言う言葉の1つをこれまた恥ずかしげもなく言いやがった。税金に頼る事さえ民間企業としては失格なのに…と最後に愚痴りつつ。

  2. 山嵐 より:

    >めど立てたい人さん
    こんばんは~
    いつもコメントありがとうございます^^
    うちでも「おむつ外しは素晴らしい」と言わんばかりに、すぐに「布パンツに替えろ」と言われます。
    しかし、利用者本人が「漏らしたら恥ずかしいから紙パンツ履きたい」と言っているのでその板挟みになっているのが介護職員になります。
    何が『連携』、何が『協力』、何が『協働』なのでしょうね。
    常にトイレのことを考えて生活せねばならない状態は、生活の質を下げていると言えますね。

  3. デイちゃん より:

    国は、尿カテ+ハルンバッグ、ストマを推奨してるんでしょうね。
    それは介護職も楽になりますね~。
    寝たきりで拘縮してる人を無理やり便器に座らせたら排尿があった!って喜んでいた人がいたけど、それ、ほとんど虐待だと思うんですけど。
    他にも、水分を異様に多く取らせることを推奨してる人達、いませんでしたか?
    介護の仕事って、「利用者さんが穏やかに過ごせる」ってことが大事だと思うのですが。
    そのために、スタッフは、何をしなければならないのか考えないといけない。
    なのに、おかしな理念だけが先走って、目的と手段が逆になってるような気がしますね。
    しかも逆になってるだけでなく、間違ってるし。

  4. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    なるほど。
    尿カテ&ストマなら合点がいきますね。
    1日に何度も寝たきりの利用者をトイレに座らせるのは一種の虐待とも取れますよね。
    他の読者様のコメントにもありましたが、トイレやパンツの為に生活しているのか、穏やかに過ごせることを目的にしているのかわからなくなってしまいますよね><

  5. デイちゃん より:

    特養や老健て、オムツの料金は施設もちですよね?
    なので「介護報酬にオムツ代が含まれてるんだから、オムツ外しを推進したらオムツがいらなくなるんだから、次の改定で介護報酬をさらに減らす」って論理らしいですよ。
    恐ろしいですね。
    でも、オムツって、有料やデイなどでは利用者が負担するので、特養や老健は介護報酬はそのままでオムツ代は利用者に払ってもらったらいいのに・・と思うのですが。
    ま、誰がどんだけ使ったとか、チェックするのが手間でしょうけど。
    でも今だと、オムツ=コストという感じで、オムツは使わない方がいいみたいな風潮ありますよね。施設もちだと。

  6. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    そうですね。
    コスト削減の意味もあるでしょうね。
    無意味な天下り職員の人件費を削減した方がマシだと思いますが、そういう所にはメスを入れないんですよね。

  7. まっちゃん より:

    この記事、びっくりしました。周りや親せきに寝たきりの方がいないひとたちが提案したのでしょうか。寝たきり、というより高齢で自分の足で立つことが難しいひとたちにトイレに座ってもらうということは、移乗の際、背骨や肋骨などの圧迫骨折の原因になっていきます。そのうち骨折をおこしていても腰痛くらいだと思ってほうっておくのでしょうか。高齢だと痛みも鈍くなるので骨折していても気づかない、介護者も全介助の重みに耐えかねて傷ついていく。おむつ代削減より医療費がかさむことになっても目をそむけるのでしょうかね。それともベッドが早く空くなんてことを考えているのでしょうか。

  8. 山嵐 より:

    >まっちゃんさん
    オムツゼロ加算については、方々から否定的な意見や批判も多くあるようで立ち消えになるかもしれません。
    普通に考えたら利用者にとってもスタッフにとっても不利益がありますものね。
    良い部分だけではなく、悪い部分も見てから判断して欲しいものです。