【続報】京都府の特養で虐待、改善勧告「1人介助で外傷」介護放棄も

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京都府の特養で虐待、改善勧告「17人の利用者が被害か」骨折も
の記事で書いたニュースの続報が流れてきました。

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◆ニュース続報概要

特養虐待疑い「1人介助で外傷」 京都、介護放棄も
京都府宮津市由良の特別養護老人ホーム「安寿の里」で、入所者への虐待があったとされる問題について、宮津市議会の全員協議会が20日開かれ、市の幹部が概要を報告した。
 昨年12月に90代の入所者が夜間にベッドから転落したことを受け、市は本来2人ですべき介助を1人で行ったため外傷を招いたことや、看護師や夜勤リーダーに報告せず適切な対応を取らなかったことから身体的虐待や介護放棄(ネグレクト)があったと判断した。
 市は2月8日に高齢者虐待防止法に基づき虐待と認定。立ち入り調査を開始後も虐待を疑われる事案が複数発生したことから京都府が16日、施設を運営する香南会(高知県)に改善勧告を出した。
 報告に続いて質疑が行われ、「人員不足が招いた問題なのか」との質問に、市は「職場全体としては足りているが、(転落した)その場では足りていなかった」と答えた。また、「他の施設でも同様の問題は起こっていないのか」との問いには「今のところは聞いていない」と回答した。
 市幹部は取材に対し、「これ以上けが人を増やさないために虐待認定した。認知症の研修に派遣できる職員もおり、法人は勧告を真摯(しんし)に受け止め改善に向けて努力してもらいたい」と話した。
【引用元】京都新聞 2018年02月20日 22時10分
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20180220000183

高齢者虐待の種類については
高齢者の虐待(グレーゾーン)考察
の記事をご参照下さい。
市は『身体的虐待や介護放棄(ネグレクト)があったと判断した』とあります。

◆ワンオペ夜勤だったのではないか

ニュース記事から読み取ると
ワンオペ(職員1人体制)の夜勤だったのではないでしょうか。
ワンオペ夜勤については
介護施設のワンオペ夜勤の暗黙の了解「利用者を起こす順番」
介護施設のワンオペ夜勤の暗黙の了解「パジャマ更衣」
の記事をご参照下さい。
ワンオペ夜勤は現在も多くの介護施設で行われています。
その業務負担がとても大きいことは私も重々承知しています。
そのワンオペ夜勤で
「身体的虐待と介護放棄(ネグレスト)があった」
ということですがニュースから問題点が見えてきます。

◆悪意の無い虐待

『虐待』と聞くと
・悪意
・狂気

の中で行われるものだと思いがちです。
特に「身体的虐待」となると
・叩く
・つねる
・縛る

などの犯罪性が疑われることが多いのですが
今回のニュースでは
「本来2人ですべき介助を1人で行ったため外傷を招いたこと」=「身体的虐待」
と認定されたようです。
高齢者の皮膚や骨はもろくなっているので、少しの力が加わったり不適切な箇所を動かすと
・外傷
・裂傷
・皮膚剥離
・内出血
・打撲
・骨折
・滑落
・転落

に繋がる場合があります。
そういう利用者の対応は
「2人の職員で介助を行う」
という指定がケアプランにも記載されます。
しかし、人材不足の介護現場では
1人の利用者に2人の職員が介助をすることさえ難しくなっている現状があります。
日中ならまだしも
ワンオペの夜勤となると「他ユニットの職員を呼ぶ」という選択肢しかありません。
しかし、他ユニットの職員も自分のユニットで約20名の利用者のケアをしています。
呼ぶ側の職員からしてみれば
・呼ぶ時間が勿体ない
・呼ぶのが面倒くさい
・呼ぶのが申し訳ない

という心理が働いてしまうのもわかります。
利用者のことを思えば、そう思ったとしても他ユニットの職員を呼ぶのが正解でしたが、このニュースの職員は呼ばずに1人で介助をしたことにより利用者が
・転落
・骨折

してしまったことが「身体的虐待」
その後
・看護師や夜勤リーダーに報告しなかった
・適切な対応を取らなかった

という行為が「介護放棄(ネグレスト)」と認定されたようです。
そこには悪意も狂気もなく
『ヒューマンエラーの問題』
だと読み取れます。
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◆ヒューマンエラーの裏に潜む「人員不足の問題」

ヒューマンエラーは人間の資質にもよりますが、
「人間が人間である以上、大なり小なり発生する人為的ミス」
のことです。
このミスを発生させる要因や確率を上げてしまったのが
「人員不足の問題」
ではないでしょうか。
質疑で

「人員不足が招いた問題なのか」との質問に、市は「職場全体としては足りているが、(転落した)その場では足りていなかった」と答えた。

という回答をしていることから
市の認識も甘いと受け取りました。
職場全体で人員が足りていても
・どこかの時間帯で足りていない状況が発生すること自体が「人員不足」であり
・それは「全体でも足りているとは言えない」のではないでしょうか。

つまり、現在の人員配置基準に
・瑕疵(かし)
・欠陥
・問題
・改善すべき点

があることを雄弁に語っています。
見直すべきは事業所の体制よりも
・法令
・ガイドライン
・人員配置基準

の方が先ではないでしょうか。
何故なら、
全国の介護施設でワンオペ夜勤が行われており
同じような状況の施設は多数あります。
第二、第三の事件が起こるのは時間の問題ではないでしょうか。
今回、たまたま日の目が当たってしまったこの介護施設(特養)の人員配置や職員の資質の問題だけを是正すれば解決することではないと思います。
事業所ひとつひとつの
・意識
・常識
・改善
・改革

も必要ですが、元となるガイドラインが現状のままだと業界全体から見れば
「何の解決にもなっていない」
のは明らかです。
今回もまた
「トカゲのシッポだけを切ってやり過ごす」
のでしょうか。


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