「外国人介護士」を受け入れても人員不足は解決しない

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介護現場の人材不足解消のために
「外国人介護士」
を受け入れるという制度があります。
既に受け入れをされている事業所もあると聞きますが、今のところあまりネガティブなイメージや感想はあまり聞きません。
ということは、この制度は
・良いものだった
・成功
・人材不足に一役買った

と言えるのかもしれませんが、私は一抹の不安と懸念を抱いていました。
【参考記事】
【外国人技能実習制度】介護業界に外国人を受け入れる事で業界は良くなるか?
実は「外国人介護士を受け入れる制度」に胸騒ぎがしています
その「胸騒ぎ」のモヤモヤが徐々にハッキリしてきたので、改めて
「外国人介護士」に関する記事を書こうと思います。

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◆外国人介護士の受け入れ制度とは?

●外国人介護職受け入れ方法の種類

・技能実習生
・EPA(経済連携協定)
・在留資格「介護」
の3種類があります。

●外国人介護職受け入れについての日本政府の検討状況の推移

2006年 フィリピンよりEPA*による外国人介護士受け入れ開始
2007年 インドネシアとベトナムよりEPA*による外国人介護士受け入れ開始
2014年2月 自民党外国人労働者等特別委員会で、介護での外国人労働者受け入れ拡大の方向を確認
2014年6月 「技能実習生見直しの方向性に関する結果(報告)」
2014年6月 「日本再興戦略改定2014」が閣議決定。2015年度中に新制度移行、外国人技能実習制度の対象職種に介護分野を追加することが決定
2014年11月 「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」発足
2015年1月 「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」報告書
2015年2月 「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ」報告書
2015年3月 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」国会提出
2015年6月  厚生労働省「2015年に向けた介護人材にかかる受給推計」発表
2016年3月 自民党が「労働力確保に関する特命委員会」を設置
2016年5月  自民党 労働力確保に関する特命委員会が「「共生の時代」に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」を提言
2016年10月 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」衆院法務委員会で可決
2017年7月 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」施行予定
2017年7月 政府が技能実習の職種に「介護」を追加する予定
(解説)
*EPAとは「経済連携協定」の略称です。自由貿易協定(FTA)を基本として、協定を結んだ国同士の経済取引を円滑化すること、経済活動における連携を強化することを目的とした条約のことです。
日本は様々な国とEPAに合意しています。介護においては2006年にフィリピン、2007年にインドネシア、ベトナムと合意に達し、EPAによる外国人介護士の受け入れがスタートしました。
東南アジアの3カ国と介護人材の受け入れに合意した背景には、EPAの交渉を優位に進めるためだったと考えられます。つまり、必ずしも介護業界のニーズに応えることを目的としていたわけではなかったというわけです。
こうしてある意味、見切り発車的に始まった介護人材の受け入れは、しくみとしてあまりにもハードルが高すぎるものでした。
そもそも、EPAによって日本で介護職として働くためには、まず現地で3年または4年制の看護大学または看護学校を卒業している必要があります。その後日本で介護施設での3年の就業経験が必要になり、日本人にも難関である介護福祉士国家試験に合格する必要があります。特に介護福祉士国家試験については、少なくとも日本語能力試験(JLPT)のN2以上の日本語能力がなければほぼ合格はできない、あまりにも高いハードルが設定されています。
EPAによる外国人介護人材受け入れは、ニーズが膨大にあるにもかかわらず、実際に介護福祉士国家試験に合格して就業できる外国人はごくわずか、というあまりに大きなミスマッチが存在しています。
それどころか、介護福祉士国家試験に合格しても日本に残る外国人はさらに減っており、EPAによる介護職を目指して入国した外国人の90%以上は帰国してしまっているのが現状です。
「EPAによる外国人介護従事者の受け入れは失敗だった」と言われていますが、こうした状況では日本政府も失敗を認めるしかないと考えているようです。
そして新たな外国人介護人材の受け入れの方法が検討され始めました。
【引用元】国際事業研究共同組合ホームページ

国際事業研究協同組合は、外国人技能実習生をミャンマー、ベトナム、インドネシア、フィリピンから受け入れる監理団体です。農業、漁業、建設、食品製造、繊維、衣服、機会、金属、介護の現場への受入れを支援し、開発途上国の人材育成に貢献いたします。

EPAによる外国人介護士の受け入れは、
・見切り発車で始まり
・あまりにもハードルが高すぎて
・日本政府も失敗を認めている

という現状があるようです。
この記事は現在、主軸として推進されている
「外国人技能実習制度」
について言及していきます。
仕組みについては以下の画像をご確認下さい。

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【出典】厚生労働省 技能実習「介護」における固有要件について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000182392.pdf

日本の介護事業所に受け入れとなった外国人は、3年~5年の期間を得て「技能検定3級~2級」を受験します。
そしてその後『帰国する制度』になります。

◆見えてきた問題点

本当に良い制度で人材不足にも一役買っているのだとすれば、全国の事業所でもっともっと外国人介護士の受け入れが進んでいるはずです。
しかし、当初私の事業所も
「4月から外国人介護士を受け入れる」
と言っていたのに、延期になりました。
外国人介護士を受け入れるための研修(技能実習指導員)に当事業所からも課長クラスが2名受講に行ったにも関わらず、何故延期になってしまったのでしょうか。
そこにはこの制度に対する「様々な問題点」が透けて見えてきました。

①調整が難しい

どの地域に居住してどの事業所に行くかは、外国人本人が決めます。
つまり、多くの事業所が
「受け入れをしたい」
と言って名乗り出ても
外国人が地域や待遇などの条件を見て
お互いの条件がマッチしないと決まらないのです。
この点は普通の就職活動と同じシステムと言えます。
地域によって賃金単価や生活環境が変わってくるのは当然で、
「全ての事業所に満遍なく受け入れを確約するものではない」
という側面があり調整が難しいのが現状のようです。

②外国人は仕事ではなく研修の為に来る

この制度の目的は
「介護現場の人材不足の解消のため」
だとばかり思っていましたが
あくまでそれは副産物に過ぎず本当の目的は
「外国人に日本の介護現場に入ってもらい介護知識や技術を習得して貰ったのちに、母国へ持ち帰ってもらう」
ということです。
つまり、
・日本のためではない
・利用者のためではない
・介護現場の人材不足解消のためではない
・介護職員の業務負担を減らすためではない
・介護現場の環境をより良くするためではない

ということになります。
もちろん、そういう副産物もあるかもしれませんが、厚労省の発表では
「外国人介護士の受け入れはあくまで研修のため」
という姿勢です。
ですから、我々の心構えとしては
「研修生として受け入れて知識や技術を習得してもらう」
というスタンスになります。

③知識や技術を教える余裕がない

既に人員不足でパンク状態に近い介護現場には、時間的にゆっくりと新人職員に知識や技術を教えるという時間さえありません。
介護職あるあるで、
「入職後、3日目には入浴介助を命じられた」
なんてことも日常茶飯事です。
日本人の新人にもゆっくり教える余裕がないのに、言葉の壁がある「外国人介護士」にゆっくり教えてあげる時間と余裕があるとは思えません。
もし、制度上、時間を割いて教えていかなければならないのだとすれば、
・現場が益々回らなくなる
・利用者に不憫や迷惑を掛ける時間が増える
・他の介護職員の負担が大きくなる

という本末転倒な結果が待っているのではないでしょうか。
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④3年~5年で帰国していく

それでも何とか「現場に迷惑を掛けながら」外国人介護士に知識と技術を習得して貰ったとして、半年や1年も経てば一人の立派な介護職員として『戦力となる日』が来ることでしょう。
それは現場にとっても大変ありがたいことなのですが、この制度上
「外国人介護士は3年~5年で帰国」していきます。
「母国で介護知識や技術を活かしてくれたらいい」
という思いはあるにしても
救われないのはやはり日本の介護現場です。
また1から新しい外国人介護士を受け入れる調整をしたり、知識や技術を教える作業をしなければなりません。
2025年までに介護職員が約38万人不足しているというのに、この制度はそういったものを視野に入れていない点で『人材不足は解決しない』と言えます。
【関連記事】
介護職員が2025年に向けて未だ37.7万人も不足している理由とは?

⑤外国人介護士の生活のフォローも必須

技能実習生(外国人介護士)5名につき1名の技能実習指導員が必要なので、基本的に5名単位の受け入れになるかと思います。
そして彼ら彼女らは、1つの家をシェアして共同生活をします。
もちろん、日本のことがわからない外国人が異国の地で共同生活をするのですから、技能実習指導員は「生活のフォロー」をすることも責務とされています。
生活のフォローとは
・経済面
・精神面
・健康面
・困り事や悩み事

など日常生活においての問題の相談や解決を行うことになります。
日本人介護士へのフォローもマトモに出来ていない介護業界が、外国人介護士には厳格なガイドラインを定めているのは「国と国の外交問題」だからでしょうか。
3年~5年で帰国していく研修生を大切にする前に
「日本で生まれ育ち介護職員として働き続けている人」
をもっと大切にして欲しいと思います。

◆まとめ

外国人介護士の受け入れは
「日本の介護現場のためではなく、外国人本人(又は外国)のため」
ということがわかりました。
「外国人のため」は良いのですが、もっと足元を見て欲しいと思います。
ある程度、現場に慣れた外国人介護士は戦力になると思いますが、残念ながら「その場しのぎ」にしかならないので根本的な人材不足の解決にはなりません。
・日本のため
・日本の利用者のため
・日本の介護現場のため
・日本の介護職員のため

にやらなければならない問題が山積みなので、まずはそちらから解決や改善を進めていって欲しいところです。


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コメント

  1. 現役保険営業マン より:

    こんばんは。慢性化している人材不足を解消できないのに、外国人研修者を人材として磨けとは…現場にとってたまったものではないと思います。

  2. primex64 より:

    研修目的で来る人たちに懇切丁寧にスキル移転するだけの余裕は現場には無い、というのはよく理解できます。しかし、ハードルが高すぎるというのは知りませんでしたよ。割と日常的に職場に入り込んでいるのかと思ってましたが、そうでもないんですね・・。

  3. 山嵐 より:

    >現役保険営業マンさん
    こんにちは~
    コメントありがとうございます^^
    まずは日本人への待遇をどうにかして欲しいです。

  4. 山嵐 より:

    >primex64さん
    こんにちは~
    コメントありがとうございます^^
    外国人介護士の受け入れには3種類あって、そのうちの2つは「介護福祉士資格取得」を目指していたので、外国人にとっては言語の問題もあり取得が困難だったようです。
    つまり、入り込むのはハードルが低かったのですが、「目的達成することが困難だった」という意味のハードルの高さですね。
    したがって、現在の主流は「介護福祉士取得」ではなく「技能検定」という試験合格にスゲ替わっています。

  5. ケンケン より:

    私は長年EPAの方々へ日本語を教えたり、現場の方と一緒に現地に面接まで行ったりもしました。技能実習生は疑問点が多く、足を突っ込まず、外見の見物です。
    その中で思うことは、
    ①外国の方が介護・看護で入ってくることによる職場の活性は間違いないこと
    ②外国の方を採用した方が安いと思うのは大間違いであるという事。日本人よりもお給料や住まい等にシビアであり、施設の環境等はSNSで情報拡散します。
    ③技能実習生でも最初は入ってくるかもしれませんが、既に人財が枯渇し始めたところも国も出てきており、数年後には本当に出稼ぎしか考えていない方々しか入国して来ない可能性が高いと思います。私はこれを本当に危惧しています。
    ブログオーナーさんのこの記事は最もであると思いますし、外国人の方は人手不足の切り札にはならないと思います。早く介護職さんの処遇が改善することを祈っております。

  6. 山嵐 より:

    >ケンケンさん
    こんにちは~
    コメントありがとうございます^^
    実際、外国人介護士の指導や調整に携わってらっしゃったんですね。
    リアルな問題点や情報のご提供ありがとうございます。
    ・日本人よりも給料や住まいにシビア
    ・既に人材が枯渇状態
    となってくると受け入れ自体が難しくなってきますね。