【ニュース】和歌山の老健で96歳女性入所者に熱湯をかけ介護士逮捕

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和歌山県の介護施設(介護老人保健施設)で、介護職員が96歳の女性入所者に熱湯をかけ、やけどを負わせるという事件がありました。

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◆ニュース概要

96歳女性に熱湯かけ重傷、介護士逮捕 「大声で叫んでいた女性が黙らず腹が立った」 和歌山
和歌山県橋本市の介護老人保健施設で、入所者の女性(96)に熱湯をかけて重傷を負わせたとして、和歌山県警橋本署は5日、傷害容疑で同施設職員の介護士の男(24)を逮捕した。「大声で叫んでいた女性が黙らず、腹が立ってやった」と容疑を認めているという。
 逮捕容疑は1月9日午前1時20分ごろ、施設内のベッドに横たわっていた女性にコップ1杯分の熱湯をかけ、唇から顎、胸にかけて約50日のやけどをする重傷を負わせたとしている。女性は現在市内の病院に入院している。
 同署によると、女性は重度の認知症。同月29日に施設の理事長から同署へ届け出があり、捜査。担当職員への聞き取りをした結果、梶部容疑者が犯行を認めたという。
【引用元】産経新聞 3/6(火) 8:17配信

◆夜勤中に発生

『発生日時は1月9日午前1時20分ごろ2階で当直中』
ということなので『夜勤中』に発生したことになります。
Sアミーユの事件もそうですが、今までの介護施設での事件の多くは夜勤帯での発生が多いです。
【参考記事】
【ニュース】Sアミーユ3人転落死事件で死刑求刑「残虐な連続殺人」
やはりどこの事業所であっても、介護施設の夜勤というのは
・鬼門
・闇が深い
・事件が発生しやすい

と言えるのではないでしょうか。
その原因としては
・他者の目が行き届きにくい
・労働時間が長い
・業務負担と責任が重い
・資質の低い職員にも夜勤をやらせている

ということが考えられます。
誰だって、虐待や犯罪をしようと思って夜勤をする人間などいません。
いたとしたら論外です。
それでも、これだけ虐待や犯罪や事件が発生するのですから、根本的な対策が急務です。

◆ワンオペ夜勤の過酷さ

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このニュースの施設がワンオペ(一人体制)の夜勤なのかは読み取れませんでしたが、当ブログでも何度もワンオペ夜勤の過酷さについては触れてきています。
事件の動機として
「女性が大声で叫び、言うことを聞かなかったので腹が立った」
とあります。
認知症で大声で叫び続ける利用者は稀ではありません。
結構な確率で存在します。
もし、夜間に大声で叫び続けられた場合
・他の利用者に迷惑が掛かる
・他の利用者が目を覚まし行動を始める

という悪影響が考えられます。
職員にも
・気が散って書類や事務仕事が出来ない
・精神状態に異常をきたしてくる

という悪影響が考えられます。
では、この場合どういう対応をすれば良かったのでしょうか。
微笑みかけようが、優しく声を掛けようが、恐らく変わらないでしょう。
そんなことで改善するなら苦労はしません。
夜勤リーダーなどに報告し、他職員の応援や付き添い対応が可能なら、現状で考え得る対応で一番ベストでしょうが、夜勤リーダーさえもワンオペ夜勤中になるので付き添い続けるという対応も難しいのです。
この場合
「思い通りにしてもらう」
「好きなようにしてもらう」
「大声や問題行動やその悪影響は耐え忍ぶ」
「アクシデントが発生してから対応する」

という残念な対応しかありません。
事前に情報が共有され、対応策が準備されていれば別ですが、それもないでしょう。
あったとしたらこういう結果にはなっていないはずです。
アクシデントに対しても、事前予測を立て未然に防ぐことが重要ですが、それが行われていなかったり活かされていないことが多いので対策はいつも後手後手になります。
夜勤中の「その場その時に発生した不穏な利用者の対応」は、「その場その時に勤務している職員の臨機応変な判断や対応」に委ねられることになります。
利用者の思い通りにさせたことで発生するアクシデントは、
・救急対応が必要になる
・報告書を書く必要がある
・業務負担を更に増やしてしまう

ということになります。
それも考えものですが、現状の体制では残念な最善策であるものの
「虐待をしたり犯罪に走ってしまうよりマシ」
ということになります。
この状況がワンオペ夜勤なら尚更負担が大きく過酷なのです。
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◆二人体制の夜勤だったら大幅に改善する

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職員同士の「合う合わない」という問題で、
「一人の方が気楽」
と考えている人もいるかもしれません。
確かに性格が合わない人や上司などと一緒に夜勤に入ると「気まずい」のもわかります。
しかし
・安全性
・安心感
・業務負担の軽減

という面から見れば二人体制にすることで大幅に改善されます。
夜勤帯の事件や事故も大幅に減ると考えています。
もちろん
「他職員の目があるから事件に発展しにくい」
という理由もありますが、
「他職員と同じ現場の空気や環境や現状を共有している」
という安心感は負担を大幅に減らします。
今回のニュース事件でも、二人体制なら結果が違ってきたのではないでしょうか。
大声で叫ぶ入所者を目の前にした場合、頼れる人が他にいないので
「自分一人でなんとかしなければならない」
と思ってしまいます。
この気持ちは「責任感」であり、
平和な夜勤を求める「自己防衛」でもあります。
その気持ちに
・悪意
・敵意
・嘘偽り
・犯罪性

はありません。
それでも「なんとか」できない事は多々あります。
全国の介護施設で昨晩も今晩も明晩も「なんとかできない状況」に直面している介護職員は大勢います。
それが「虐待の温床」になっているのは間違いありません。
「なんとかできない状況」を「なんとかできる状況」にしてあげるだけで、介護職員の虐待や犯罪は大幅に減ります。
事前の対応策の準備も大切ですが、その場その時の利用者の言動や行動に対応していくには、やはり二人体制の夜勤が良いのではないでしょうか。
二人体制になると
・相談ができる
・冷静になれる
・負担と苦労と責任を分かち合える

等々、メリットが多く介護事件も事故も間違いなく減ります。

◆何故、二人体制にならないのか

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そんなにメリットが多いのに、何故、全国の介護施設では未だに一人体制(ワンオペ)の夜勤が多いのでしょうか?
理由は大きく分けて2つあります。
①人材不足
②財源不足

①人材不足

日中ですら二人しか職員がいないほど人材が不足しています。
日中は食事や入浴の介護をせねばならず、レクや行事もあったりします。
職員二人では到底業務を回せませんが、職員の自己犠牲によりかろうじて首の皮一枚繋がっています。
そんな状況では夜勤に職員を二人も配置できるわけがありません。

②財源不足

介護保険制度自体が破綻寸前と言われています。
特に介護保険を財源としている事業所は大きな利益が上げられない仕組みになっているのが現状です。
そうなると、削りたくなってくるのは『人件費』になります。
国は闇雲な自立支援を推奨したり、オムツ等を自費(自己負担)にすることで財源の消費を抑える政策を打ち出していますが、利用者のためではなくて、財源確保のためということが見え透いてしまっています。
財源が無いのに、事業所が夜勤職員を二人体制に出来るはずがありません。
実はもうひとつ①と②の理由に共通する致命的な3番目の理由があります。

③人員配置基準でワンオペ夜勤が認められている

厚生労働相が指定する『介護施設の人員配置基準』に一人体制(ワンオペ)の夜勤が認められています。
その理由は①に挙げた人員不足と②に挙げた財源不足があるからです。
国が基準を指定しているのですから、事業所の
・自助努力
・企業努力
・営業努力

なんてものはあったものではありません。
国のお墨付きなのですから
今日も明日もこれからも
堂々とワンオペ夜勤を配置してきます。
そして虐待や事件が発生すると、こう嘆くのです。
「何故、起こったのか原因を究明していきます」
「配置人員には問題ありませんでした」
「協議の上、対応を検討します」
「研修が不十分でした」
「誠に遺憾です」

牛丼を提供する某チェーン店が、ワンオペ夜勤をさせていて暫く営業できないことがありましたが、
「人間に介護サービスを提供する介護事業所」
が未だに全国でのうのうとワンオペ夜勤をさせ、事件や事故を多発させている現状の方が
「誠に遺憾」であり「甚だ滑稽」なのです。
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コメント

  1. ショートスタッフ より:

    本当に記事の通りですね。高齢者が嫌いで老健に就職するする人は居ないに等しいと思います。虐待をしたくてロングワンオペ夜勤をする人も。
    好きで始めた仕事、と言われたらそれまでですが。
    不穏って立ち上がりってトイレって、なぜあんなに見事にリンクするのでしょうね。
    私は独りしかいないのでどうにもならない時はもう諦めて笑うしかありません。
    アクシデントレポートに人手不足の語を禁じられているので、意味のない改善策を書きながら馬鹿馬鹿しくなります。
    事故がないのは運良いだけ、そんな感覚です。
    せめて夜間だけでも4点柵を許してほしい。
    転落リスクが高いのに2点柵で個室で臥床してもらうことが尊厳を守ること(しかもワンオペ)?
    この国のいう人権って なんなんだろうって思います。

  2. 山嵐 より:

    >ショートスタッフさん
    こんにちは~
    コメントありがとうございます^^
    リスク報告書に「人員不足」が禁じられていますか、そうですか。うちと同じですね(笑)
    正に「事故が無いのは運が良いだけ」ですね。
    日々、綱渡り状態と言えます。
    赤ちゃんのベビーベッドは四方八方囲ってありますよね。
    赤ちゃんにだって人権があるのは同じはず。
    ・赤ちゃんと成人(利用者)とは人権が違うのか?
    ・親や介護者の支援が必要な状況は同じはず
    ・安全確保の為という目的も同じはず
    どこでどういう折り合いをつけているのか私も常々疑問に思っておりました。

  3. primex64 より:

    こうやってお話しを伺っていると、劣悪な事件の元凶の大半がワンオペにあるようなきがしますね・・。

  4. 山嵐 より:

    >primex64さん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    私もそう考えています…。