介護施設の避難訓練の実情「当日はパート職員だけで対応」

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私の勤務している介護施設では、年に何回か
「防災訓練」
「避難訓練」
「消火訓練」
「水難訓練」

があります。
これが結構な手間で、業務を中断せざるを得ませんし、いらぬ体力をつかいます。
そうは言っても
「もし災害が発生した場合のシミュレーション」
として実施しておくべき義務ということもよくわかります。

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◆義務の根拠となる法律や法令

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介護施設において防火訓練や避難訓練、水難訓練をしなければならない法的な根拠はどの条文にあるのでしょうか。

消防法
第八条一項

学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。

消防法施行令
第四条の三

法第八条の三第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物(次項において「防炎防火対象物」という。)並びに工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)とする。
別表第一(六)項
ロ 次に掲げる防火対象物

(1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第一項に規定する要介護状態区分が避難が困難な状態を示すものとして総務省令で定める区分に該当する者(以下「避難が困難な要介護者」という。)を主として入居させるものに限る。)、有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、介護老人保健施設、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第四項に規定する老人短期入所事業を行う施設、同条第五項に規定する小規模多機能型居宅介護事業を行う施設(避難が困難な要介護者を主として宿泊させるものに限る。)、同条第六項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの

津波防災地域づくりに関する法律の施行令
第十九条

法第七十一条第一項第二号の政令で定める施設は、次に掲げるものとする。
一 老人福祉施設(老人介護支援センターを除く。)、有料老人ホーム、認知症対応型老人共同生活援助事業の用に供する施設、身体障害者社会参加支援施設、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム、障害福祉サービス事業(生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援又は共同生活援助を行う事業に限る。)の用に供する施設、保護施設(医療保護施設及び宿所提供施設を除く。)、児童福祉施設(母子生活支援施設及び児童遊園を除く。)、障害児通所支援事業(児童発達支援又は放課後等デイサービスを行う事業に限る。)の用に供する施設、児童自立生活援助事業の用に供する施設、放課後児童健全育成事業の用に供する施設、子育て短期支援事業の用に供する施設、一時預かり事業の用に供する施設、児童相談所、母子健康包括支援センターその他これらに類する施設

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◆介護施設の避難訓練の実状

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普通の会社や学校などの場合の避難訓練は
「自分が避難する」
「自分の命を守る」

ということに目的が置かれ優先されます。
しかし、介護施設の避難訓練の場合は
「自分と利用者を避難させる」
「自分と利用者の命を守る」

という目的となり
「自分だけ助かってはいけない」
と言わんばかりに介護職員としての責務と責任が非常に重くなります。
もし実際、災害が発生した場合、自分だけ逃げて利用者を避難させようとしなかったら
「職責の放棄」
「人命救助義務違反」

などと言われる可能性が十分にあります。
ホテルや旅館などのサービス業のスタッフや、飛行機や電車などの乗務員などにも災害が発生した場合には同じように
「宿泊客や乗客を避難させる義務」
がありますが、介護施設と大きく違うのは
「利用客のほとんどは自分で動ける普通の人」
という点です。
介護施設の利用者の多くは
・認知症
・車椅子
・寝たきり
・高齢者

となるので自発的な避難が難しく、ほとんど場合、介護職員の避難介護が必要になります。
中には耳が非常に遠く、耳をつんざくようなサイレンと避難放送が流れていてもその音が聞こえず
「へ?なに?何かあったの?」
という顔をしている利用者もいます。
サイレンや警報さえ聞こえない利用者に避難を促すだけで大変です。
もし本当の災害なら一刻を争う事態なのです。
自分では動けない利用者も多数います。
介護職員として、すぐに抱えて車椅子に移乗し避難させます。
正直、訓練だから冷静にやっていますが、もし本当に火の手が目前まで迫っている時に全ての利用者と自分を安全に避難させられるかは、未知数です。
そして、全員避難後に本部となる所へピッチで連絡し
「〇〇ユニット利用者〇名、職員〇名、避難完了しました」
と報告して訓練終了となります。
消防署員立ち会いの訓練の場合は後ほど
「7分以内に全員避難させないと焼け死ぬ」
などと手厳しい総括を言われます。
日中ならばまだ何名かは職員がいますが、夜間帯に火災が発生した場合は本当に大変なことになると思います。
ワンオペ夜勤の介護施設の場合、1人の職員で20名にも及ぶ利用者全員を7分以内に避難させるのは
「ちょっと無理」
「全員避難させようとすると職員の命さえ危ない」

というのが現実ではないでしょうか。
「夜間想定」の避難訓練もありますが、ワンオペ夜勤を想定している為、日中の訓練なのに1人の職員で避難誘導をやらされます。
他の職員は
・利用者の見守り
・避難誘導をしている職員の見守り
・どうしても無理そうなら少しお手伝い

という感じです。
メインで避難誘導をさせられたら、訓練なのに身体を壊してしまいかねません。
訓練のお陰で腰痛や身体の不調を発生させていては本末転倒なので、手伝ってもらったり無理をしないように配慮をしてくれるのですが
「訓練で出来ないことは本番でも出来ないと思うのです」
まぁ、臨場感を味わったり避難経路の確認をしたり場数を踏むことが目的なのかもしれません。
実際に避難できるか出来ないかは
「火事場の馬鹿力」
に任せるしかないということだろうと思います。

◆人員不足の介護施設での避難訓練の実情

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私の勤務する介護施設は、事業所全体で人員不足なので、日中にパート職員しかいない日もあります。
避難訓練の日程は事前にわかっているのですが、その日がたまたまパート職員しかいない場合があります。
人員不足が故に、避難訓練の日にわざわざ正職員を配置する調整も難しくなっています。
その状況で嫌がるのが当日出勤のパート職員です。
「避難訓練の日は正職員がいてくれないと困る」
「私たち、ピッチの掛け方知らないよ」
「寝たきりの利用者を抱えられないよ」

等々言ってきます。
気持ちはわからなくもありません。
でも私は思うのです。
「これは訓練だからいいけど、もし日中にパートさんしかいない日に実際に災害が発生したらどうするのだろうか」
「対応できないことを対応できるようにするための訓練ではないのか」
「そもそもパートさんしか配置できない人員不足を放置する事業所がおかしくはないか」

パート職員なのに相当な負担を掛けてしまうのは大変申し訳ないですが
「普段の状況の中で訓練をしないと意味がない」
のも事実です。
「訓練だから正職員がいて欲しい」
のではなくて
「普段から正職員が配置できる人員確保をして欲しい」
というのが筋です。
恐らく避難訓練当日はグダグダになることでしょう。
しかし、人材不足の介護施設の日常は、パート職員に負担を掛けながら首の皮一枚で繋がっているのが実情です。
「大変だとは思いますが、頑張って下さい」


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コメント

  1. ダメ人間 より:

    こんばんは。
    下記の内容にて読まれて気を悪くしたら、申し訳ありません。
    今まで社福・医療の通所で避難訓練を経験しましたが、前者は単独型・後者は病院内の通所という違いがありますけど、総務の職員=防災担当者がしっかりしていた医療の方が、真面目に取り組んでました。
    自分が給与額が低くても通所に勤務するのは、以前に書き込みした夜勤が×に加え非常時の事もあり、特に人手が少なくなる夜間帯に「救助出来る訳ないじゃんw」と、夜勤帯での実習を通じて思えたからなんです。
    東日本大震災の時はそれ程に感じなかったのですが、今から2年前に東北で台風の大雨により、岩手県内の川沿いにあったGHと老健が被害に合い死亡者が出ましたよね。
    映像や新聞を見て思ったのですが、この待遇でそこまで責任を負うのはバカらしい&正直にやってらんないので、
    ・どうせご老人ですから、天災という事でいいんじゃない?
    ・責任問題があるから、お気に入りの「ある程度のクリア」で「おとなしくて動ける利用者」1人だけ助けりゃいいかw
    って思いました。冗談抜きの真面目に。
    こんなダメ人間でも仕事用のキャラ作って、どの施設でも利用者・上司からも真面目な介護職員って思われていたので、人間ってとってもバカだと思うと同時に、こんな人間でもいなけりゃ現場が回らない事に、この業界のゲスさを感じますねー。

  2. 山嵐 より:

    >ダメ人間さん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    言わんとしていることは闇深い部分でよくわかります。
    そもそも介護職員は自分の生活と身体を守るのに精一杯ですものね。

  3. デイちゃん より:

    私なら、そのパートさん達に、
    「できないことはしなくていいです」
    「無理しなくていいです」
    「もし課長とかに何か言われたら、できないことはできません、だったらあんたが来てしたらいいだろが?お前ならできるのか?できなかったら土下座だぞ?ってキレて下さいね」
    って言いますね。(笑)
    だってさ~、人間の力じゃ限界あるじゃん。
    できもしねーことやらされて、「なんでできないのか?できないお前たちが悪い。」って言う奴いるけどさ~。だったらお前がやってみせろって。手本見せてみろよって。できなかったら土下座しろよって感じだし。
    で、医療だと、トリアージで、助かりそうな人から助けるって原則あるけどさ、福祉の現場で利用者一人だけ連れて逃げるとかなったら、どの人を選ぶんだろ。
    でも重度は運べないからやっぱり自立してる人からだね。そういうルールあるのかね?マニュアルに。「自立してる利用者から救助してください。」とか。
    さらに、避難訓練って、想定してるのは災害の避難かもしれないけど、例えば、不審者が侵入してきて利用者殺し始めたらどうするの?とか考えてるのかな。
    一時期、小学校とかで、不審者が侵入してきたときの訓練してたけど。さすまた使う練習とか。
    もっとよくある緊急事態は、利用者の急変でしょう。
    スタッフいないのに急変者が複数出て、でも目はなしできない利用者がいたらどうすんの?とかさ。
    そもそもできもしないのに末期がん患者の看取りしてる施設多いけどさ~。
    現場を甘く考えてるっていうか、何も考えてないよね~。
    そうそう、デイサービスって、毎日必ず一人は常勤さんの配置が必要なんですよ。
    それって、こういう非常事態の時に責任のある行動ができる人を一人は配置しなさいって意味だと思うんですけどね。
    施設は違うんですね。

  4. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    おはようございます。
    コメントありがとうございます^^
    人間、限界がありますから出来ないことは出来ないですね。
    「出来ないことを出来る努力をしよう」
    「出来なくても前向きに行動しよう」
    という意味を含んだものかと思います。
    トリアージのマニュアルは聞いたことがないですね。
    福祉現場では皆平等に助けろっていうことなのか、そもそもそういう概念がないのかはわかりませんが。
    障害者施設に不審者が侵入した凄惨な事件もありましたね。
    まぁ義務化されていない訓練まではやらないのでしょう。
    特養及びショートは「常勤換算で介護士又は看護師が1人以上」の配置が求められますね。
    介護職員がパートだけでも、正職員の看護師が1人いれば配置基準を満たします。
    避難訓練では看護師は見守りだけで結局動くのは介護職員だけですが。