「介護はクリエイティブな仕事だ」と言われることで感じる違和感

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介護の仕事を総括すると
「利用者の生活や自立を支援する創造的でクリエイティブな仕事だ」
と言う人もいます。
確かにそう言い換えることで介護職員の専門性が一段上がるように感じます。
「生活クリエイター」
「自立支援クリエイター」

介護職員の呼び名がそう変われば、あたかもクリエイティブな芸術家のような専門性を感じます。
しかしどうしても違和感を感じてしまう部分があります。

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◆違和感①「利用者の生活を創造?」

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「利用者の生活をコーディネイトするクリエイター」
という表現をすると耳触りも良く聞こえます。
しかし介護の基本は
・自己選択
・自己決定

になります。
あくまで、本人の意思を尊重し出来ない部分を補うのが介護の仕事です。
利用者本人の生活や人生を創造していくのは利用者本人です。
介護職員に大切なのは『自分を守る』こと』の記事にも書きましたが「パーソン・センタード・ケア」という認知症ケアの考え方でも

とくに認知症がある場合は、一人ひとり異なる認知機能や健康の状態、性格、人生歴、周囲の人間関係など、その人の個別性をふまえ、また関わりを通して、その人が今どのような体験をし、どう感じているか、周囲の人が理解し、支えようとすることが大切ではないでしょうか。

と書いてあります。
つまり、我々介護職員は
「利用者の人生や生活を創り出すのではなく、支える役目」
だと言えます。
また、対人援助の専門職の基本理念である「バイスティックの7原則」では

①個別化の原則
②自己決定の原則
③受容の原則
④非審判的態度の原則
⑤秘密保持の原則
⑥統制された情緒的関与の原則
⑦意図的な感情表現の原則

に従った行動が求められています。
つまり、まとめると
介護職員=「利用者の自己決定を尊重し利用者自身が自分の人生や生活を創造できるように支える役目」
ということになります。
無理やり「クリエイター」とか「クリエイティブ」という言葉を使うならば
「クリエイター補助員」
「クリエイティブ支援員」

という名前になるでしょうか。
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◆違和感②「イメージだけを変えようとしてもダメ」

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国を挙げて介護職員のイメージアップ大作戦と囲い込みが行われています。
【関連記事】
【2035年には介護士79万人不足】「益々介護士の価値が高まる」という虚像のイメージアップ大作戦
イメージアップは良いことだと思いますが、中身が伴わないイメージアップは
・虚像
・名ばかり
・蜃気楼
・陽炎

でしかなく、ひいては益々現職の介護職員を苦しめることにもなります。
もし仮に介護職員がクリエイターだとするならば、そのクリエイターに
「どのような職権を与えていますか?」
「どのような環境を与えていますか?」
「どのような対価を与えていますか?」
「どのような将来性を与えていますか?」
「どのような社会的地位を与えていますか?」

まるで中身が伴っていないのではないでしょうか。
そもそも、介護職員はクリエイターではないので中身が伴わないのは仕方の無いことです。
しかしながら
「自分の価値を高めていく」
「働きやすい環境改善を訴えていく」
「見合った対価や待遇を獲得していく」

という方向性から見れば
「自分の人生を創造していくクリエイター」
であると言えるのかもしれません。
でもそれって、介護職員でなくとも誰でも言えることになります。
中身が伴っていないのに
「イメージや肩書だけを上げようとするのは良くないこと」
というのは普通に考えればわかることです。

◆違和感③「幸せを創造する?」

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「利用者の生活は利用者が創造するにしても、介護職員は幸せを創り出すからクリエイターなんだよ」
ということを言われるかもしれません。
そう言える事業所の介護職員は余程幸せな状況なのだと思います。
自分が幸せではないのに他人を幸せにすることは出来ないからです。
【関連記事】
職員が幸せになれば利用者も幸せになる理論
ここで特に問題となるのは
「利用者の幸せ欲求が倫理的に問題があったり法律に抵触している場合はどうするのか」
ということです。
例えば
「職員の体を触りたい、セクハラしたい」
「自分の思い通りにならなければ暴力で解決したい」

という欲求があった場合も甘んじて受け入れるのでしょうか。
現状では、そういう利用者さえも受け入れてしまう事業所が多く、介護職員は不幸の中で働いていると言えます。
Twitterでもこの記事に大きな反響がありました。

利用者の幸せを創造できるかどうかは
「事業所がどこまで介護職員の幸せをクリエイティブしているか」
ということと正比例してくると思います。

◆違和感④「組み立てていく考え方は必要」

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物事を組み立てて話し合いをしたり結論を導き出して実施する、という一連の流れは必要です。
そういった考え方を「クリエイティブ」だと言うのならきっとそうなのでしょう。
しかし、その過程はどの職業にも当てはまります。
作業員だって、どのルートでどういう形でどの順番で作業をするのか考えて仕事をしています。
「何も考えずに仕事をしている人なんていない」
ということです。
介護職員がクリエイターだとするならば、全職種、全産業、全人類もクリエイターなのです。
それを履き違えてしまっている人が
「介護職員はクリエイティブでなければならない」
などと視野の狭いことを言っているように感じます。

◆まとめ

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介護職員や介護現場に携わる専門職が
「利用者の生活をクリエイティブする」
などと言うのは
・図々しい
・おこがましい
・誇大表示
・基本理念や方針にそぐわない(むしろ矛盾)

ということになります。
中身の伴わない「名ばかりのクリエイター」に仕立て上げられる前に、業界全体で「介護職員の幸せについて創造」していって欲しいと思います。
介護職員が幸せになれば利用者や入所者も幸せになります。