「身体拘束」の研修では教えてくれない「グレーゾーン」の在り方

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先日、施設内で「身体拘束」に関する研修がありました。
この度の介護報酬改訂で、身体拘束に関する減算の見直しがあったからだと思われます。
「介護職員その他の従事者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施する」
となっています。

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◆研修の内容は?

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上記画像のプリントが「拘束についての意識調査」です。
拘束と思うものに〇
もしかして…と思うものに△
拘束ではないと思うものに×
をつけて下さい。
1.自分で柵を外せない利用者のベッドをベッド柵で囲む
2.ベッドの片側を壁につけ、もう一方はサイドレールを使用し、転倒を防ぐ
3.ベッド柵を抜かないように柵を固定する
4.転倒時の外傷予防に帽子をかぶる
5.車椅子や椅子からずり落ちないようにY字型拘束帯や腰ベルトをつける
6.居眠りのある利用者は車椅子で見守る
7.徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢を紐で縛る
8.車椅子や椅子から立ち上がれないように動かないテーブルに車椅子(椅子)を入れる
9.立ち上がりが難しいソファに利用者を座らせる
10.普通型の車椅子は前のめりになることがあり危険な為ティルトの車椅子に乗せる
11.ベッドから降りるのが解るようにセンサーマットを置く
12.転倒防止のためにセンサーマットを置く
13.脱衣やおむつはずしをしないように、つなぎ服を着せる
14.経管栄養のチューブを抜かないように手にミトンをはめる
15.経管栄養のチューブを抜かないように四肢を紐で縛る
16.自分の意思で開ける事が出来ない居室に隔離する
17.園外やベランダに勝手に出ないように窓を2重ロックする
18.行動を落ち着かせる為に向精神薬を過剰に服用させる
19.非常階段入口に椅子、パーテーションを並べ出られないようにする
20.呼んでいる利用者に「ちょっと待って」と待たす
21.コールが手の届かない所にある
22.徘徊している利用者の行動を制限する
23.「ここに座ってて」と見守れる所に居てもらう
24.食事のエプロンの上にお膳を乗せ食べてもらう
25.食事の1時間前に食堂に誘導しエプロンをつける
26.車椅子を1列に縦に並べ待機してもらう
27.拘縮がある為、服の袖を通さず、前から落ちないように後ろでくくる

皆様、お解りになるでしょうか?
現状の介護業界では「全ての項目が拘束」になります。
明らかに拘束だとわかるものもありますが
「4の転倒時の外傷予防に帽子をかぶせる」
「11のベッドから降りるのがわかるようにセンサーマットを置く」

などは一般の人からしたら「何故?」と思われるのではないでしょうか。
そもそも、センサーマットは「今話題の介護ロボット」ではなかったのでしょうか。
【関連記事】
「夜勤に介護ロボットの導入で加算」の真実→「ふざけてる」
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◆グレーゾーンは不適切ケア?

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厳密に言えば、全ての項目が身体拘束ですが、「身体拘束同意書」が必要な項目と不要の項目があります。
(身体拘束の要件については『そうは言ってもやはり介護職のレベルは低いのか』という記事に書いています)
明らかに「縛る」「閉じ込める」「ミトンを装着する」などのあからさまで直接的な拘束には同意書が必要ですが、それ以外の項目には同意書は不要になります。
「同意書が不要(=グレーゾーンと呼ばれています)なのに拘束」
と言われる時点で明らかにおかしいのですが
「おかしいのが介護業界」
だと言えます。
【高齢者の虐待】「グレーゾーンは不適切ケア?」その原因と改善策をわかりやすく解説します』という記事でも書いていますが、現在の方針は
「グレーゾーンも不適切ケアなので虐待の温床とならないように無くしていきましょう」
ということになっています。
さすが現場に出ず、利用者とも向き合わず、会議室で資料を並べた中で創り上げられた業界だということがよくわかります。
ここまではどこでも教える研修の内容です。

◆研修では教えてくれないこと

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「グレーゾーンは不適切ケアなので無くしていきましょう」
と簡単に言われても介護現場ではやらざるを得ない状況があったり、やらなければ安心安全なケアが提供できない場合が多々あります。
そういった矛盾にどう折り合いをつけていけばいいのでしょうか。
まずは
「同意書が必要な拘束は利用者にメリットがあっても拘束」
「グレーゾーンは利用者のニーズやメリットがあれば拘束ではない」

という2つを分けて考え理解しておく必要があります。
センサーマットの場合も
「介護職員や事業所が利用者の動きを把握して効率的に介護をしたい」
という一方通行な理由で設置すると拘束と言われますが
「転倒することで怪我をしたくない」
という利用者のニーズがあれば(若しくは、あると思われれば)拘束ではなくなるのです。
12番目の「転倒防止のためにセンサーマットを置く」という項目も、考え方や受け取り方によって拘束かそうでないかが異なってくるのです。
もう禅問答の世界です。
要は
「利用者本人のニーズやメリットがあるグレーゾーンはやってもいい」
「但し、介護者がそれをグレーゾーンだと認識している必要がある」

という結論になろうかと思います。
現状の「グレーゾーンさえも無くしていきましょう」という方針とは逆の結論になってしまいましたが「何でもかんでも「身体拘束」と言って禁止してしまうのも限界がある」のです。
グレーゾーンを無くすことに心血を注ぐよりも、必要悪として捉えていく必要があるかと思います。
研修でも、そういうことを噛み砕いて教えてあげればわかりやすいのですが、現状では「何でもかんでも拘束」と言ってしまうので「狂っている」としか言いようがありません。

◆まとめ

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事業所や職員の都合で介護をしてはいけないことはよくわかりますが、普段何気なくやっていたり、良かれと思ってやっていることでも、上司や行政が見たら
「拘束だー!虐待だー!」
と言われてしまうかもしれません。
ですから、グレーゾーンの存在と拘束に当たらない理由を理解した上で介護に当たることが必要です。
利用者を守る前に自分を守らなければならないのです。

コメント

  1. アングラー より:

    グレーゾーンを無くしたかったらワンオペ夜勤なくしてください。その為には職員数増やしてください。その為には処遇改善してください。 と、これに尽きる気がします(笑)

  2. デイちゃん より:

    こんにちは。
    介護って、「〇〇してはいけない」ってことばかりですねえ。
    利用者様がしたいように動いてもらって、でも事故がないように適切な見守りはして、でも利用者様の行動の制限はしちゃいけない。
    介護ってすごい仕事ですね。(笑)
    お薬使わないで精神疾患がある高齢者を穏やかに過ごせるようにしなきゃいけないんだから、少なくとも精神科医よりは多くもらわないとダメですね。
    日給10万はもらわないと。アッハッハ!
    認知症のじいさんスタッフ、入浴で疲れ切ってるのか、だんだん怒鳴らなくなりました。(笑)
    まあ70近いのに、毎日機械浴4人とかしてたら、体力消耗するよね。
    でも要支援の人が2人、「怒鳴ってるスタッフがいるから行きたくない」と、結局やめてしまいました。
    管理者、バカだねえ。
    そうそう、認知症のじいさんスタッフのせいだけではないけど、最近、利用者が激減!
    もともと、家ではいられないような重度を毎日利用させて売り上げをかせいでるから。だから家で事故になったり、家族がいよいよムリ!となって、終了が連続すると、利用者の延べ人数では大幅な減少に。
    家にいる時に徘徊して骨折したり、脱水になって入院した人が3人。
    ご主人が手術で、ご本人様はショート利用してたんだけど、ご主人がその後もうみれないわとなって入所予定の人が2人。
    末期がんの人が1人看取りに。
    透析始まった利用者が、「透析がしんどいから」とほぼ終了状態。
    わ~、今月は先月比マイナス100万かも。(笑)
    で、管理者は、会社のおかしな研修で出張ばかりしてるんだけどさ、早く営業に行かないとまた赤字になっちゃうよ。
    そもそもその研修って、なんかくだらない経営に関する研修なんです。意味がわからない。
    去年会社の有料ホームで殺人事件があったんだからさ、それこそ虐待についての研修とかした方がいいんじゃないの?
    さらに言うと、研修してる暇あったら、現場に人投入して、虐待の芽を摘んだ方がいいんじゃないの?
    どうせ現場のサービスからしかお金は入ってこないんだしさ。
    アホな会社にアホな管理者。ま、私はゆっくり有給使います。(笑)

  3. トロン より:

    仰る通りだと感じました。
    何事にも適用範囲というものが存在すると思います。
    限られた時間の中で多数のすべきことがある中で、
    このグレーゾーンの優先順位というものを提示してくれないのは残念ですね。
    仮にこのグレーゾーンを行わないことはすべてにおいて優先される最優先事項とする場合、その変わりにあらゆる業務が破綻し、多数の怪我人・死亡者が出てきてしまいます。
    そうした実情を一切考慮せずに、とにかくやれとなる事を残念に思います。逆に優先順位として他の側面。危険の回避や、有限の人員・時間・お金の中でどこにリソースを充てるか?という観点を認めた上で、このグレーゾーンにも一定程度配慮してほしい。という事ならば、大いに理解できます。
    人員・時間・資金が投下されれば余裕が生じますから、従来優先順位が低かった部分についても行う余地が出てきます。

  4. ダメ人間 より:

    こんばんは。
    山嵐さんが受けた研修の「拘束についての意識調査」に掲載されている項目、医療機関だったら普通に行っている事がありますよね。
    以前に勤務してたDCは昔で言う老人病院も経営してまして、タイムカードが病院内にあったので、いつも病院の廊下を通る訳ですが、拘束祭り状態でした。
    医療はOK介護はNO……もう訳が分りませんね。
    北斗の拳の世界観の様に、現場が「ヒャッハー」な状態にならないと、もうどうにもならない気がします。
    んまぁ、お国様がそう望んでいるみたいなんで、末路を暖かい目で見ましょう。

  5. 山嵐 より:

    >アングラーさん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    お返事遅くなり申し訳ございません。
    全くその通りだと思います。
    ワンオペ夜勤の介護施設は総じてブラックだと言えます。

  6. 山嵐 より:

    >デイちゃんさん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    お返事遅くなり申し訳ございません。
    「スピーチロック」や「ケアロック」をされているのは我々介護職員と言っても過言ではありませんね。
    研修とか資質の向上って必要なことだとは思いますが、まずは現場に出て利用者と向き合うことが最優先な気がします。
    そこからどういう方向にするのか、どういう研修をしたらいいのか、どうすれば労働環境が良くなるのか、を考えていく必要があるのではないでしょうか。
    机の上で電卓を叩いていても何も始まりませんよね。

  7. 山嵐 より:

    >トロンさん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    お返事遅くなり申し訳ございません。
    そうですね、とても残念なのが介護業界です。
    自分達は現場に出ず、滅茶苦茶な理論を押し付けるだけの人たちが決めていることなのでどうしても現場との温度差や乖離が発生してしまいますよね。
    ワンオペ夜勤を認めてしまっている時点で配慮する気がないように感じます。
    以前の記事にも書きましたが、某牛丼チェーン店でもワンオペ夜勤が過酷すぎて暫く営業できない時期があったのに、利用者の命を預かる介護職員がワンオペを許されていることが未だに謎です。

  8. 山嵐 より:

    >ダメ人間さん
    こんばんは~
    コメントありがとうございます^^
    お返事遅くなり申し訳ございません。
    医療と福祉では拘束の可否や受け止められ方が全然違っていますね。
    「医療は病気やケガの治療のためだからOK」
    「福祉は心身のケアや尊厳を重視するからNG」
    という安易な考え方だと言えます。
    そこまで徹底するのなら、骨折でギブスやシーネ固定をされている利用者は介護施設では受け入れ不可にするか、ギブスやシーネを外して生活してもらうようにすればいいと思います。
    介護施設でギブスはOKでエプロンはダメという理論が全くもってわかりません。

  9. ダメ人間 より:

    こんにちは。
    >デイちゃんさん
    山嵐さんの「施設規模を縮小する方向に決定」の記事にて、派遣に関して色々と教えて頂きましたが、ありがとうございました。
    お礼が遅くなり大変申し訳ございません。
    色々と職場見学をし介護施設にて、派遣を頑なに使わない所もあればガンガン使っている所もあるので、その差が激しいですね。
    法人のHPに広報誌をUPしている所もあって、興味をもった法人にて色々と見る様にしていますが、前者の法人でも昨今の人員不足から派遣を使いだした所もあったりして、色々とありますね。
    >山嵐さん
    おっしゃっている事…本当にそうだと思います。
    法律の問題があると思いますが、以前に勤務してた医療のDCにて、タイムカードを押す度に拘束祭りを見て、医療と福祉では何故にここまで拘束の可否や受け止められ方が違うのか、疑問に思う時がありました。
    また拘束祭りの法人だったので、喫煙所近くにあった洗濯干し場にはミトン等の拘束用具が色々と干してありました。

  10. とも より:

    こんばんは
    でました、身体拘束
    勤務先でも、つなぎ服の方います。PEGを抜いてしまう恐れ大の方。
    よくケアマネとかは「まだ方法あるんじゃない?」と、具体案も出さずに言います。
    事故になると大騒ぎ、防ぐための方法は丸投げ
    最近おもしろい文書を勤務先で見ました。そこに「センサーマットは転倒防止の道具ではない。あくまで利用者の行動を把握するための道具」と書かれていました。
    拘束を防ぐためにここまでしなきゃいけないとは、世知辛い業界です涙

  11. 山嵐 より:

    >ともさん
    こんにちは~
    コメントありがとうございます^^
    本当、世知辛い業界ですね。
    知恵熱が出そうになります。
    言い回しを変えただけで現実は何も変わっていませんよね。
    もっと他の事に注力すればいいのに、と思います。

  12. 山嵐 より:

    >ダメ人間さん
    こんにちは~
    お返事遅くなり申し訳ございません。
    刑法の正当防衛や緊急避難の要件に「法益権衡の原則(ほうえきけんこうのげんそく)」というものがあります。
    「ほかにとるべき方法がないことが必要である(補充の原則)。次に、その行為から生じた害が、その避けようとした害の程度を超えないことが必要である(法益権衡の原則)。両者が同じでもよい。」
    これと同じ考え方をして、拘束やグレーゾーンの介護をしないことで生じる害と、することで生じる害の比重を天秤にかけて正当性を主張できればいいのですが、介護現場はそういうわけにいかず、高齢者や利用者の尊厳や人権ばかりが最上位に位置する世界です。
    やはり介護業界は独特ですね。