「全国一律の統一した介護が求められる」のにローカルルールが存在する理由と問題点

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現状の介護業界は「介護保険制度」で成り立っています。
介護保険制度は、「介護保険法」に基づいて、その関係法令や通知や法規、省令や条例に則って「全国一律に統一した介護サービスの提供」が出来るよう様々な基準や決まり事があります。

そこまでは制度上の方針は理解できるのですが、大きな問題だと感じているのが「ローカルルール」の存在です。

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◆ローカルルールとは?

一般的に「ローカルルール」とは

地方ルールとも呼ばれ、ある特定の地方、場所、組織、団体、状況などでのみ適用されるルールのことを指す。
【引用元】ウィキペディア

介護業界の介護保険制度下においては
「一部の解釈や運用については管轄の地域の保険者(市区町村等の行政)の担当課の判断が認められている」
という権限委譲がある為に
「同じ事案でも地域ごとで必ずしも統一された判断ではない」
というローカルルールが存在します。

◆介護業界でローカルルールが認められている理由

介護業界において権限委譲やローカルルールが認められている理由としては

理由1「市区町村が保険者だから」

各地域で介護保険の実際の保険者は市区町村になります。
直接的で実質的な保険運営を行っている行政機関になるので、ある程度の権限が無いと柔軟な対応が困難になります。
ちなみに、保険者は以下の8つの業務を行っています。

①被保険者の資格管理に関する業務。
②要介護認定、要支援認定に関する業務。
③保険給付に関する業務。
④サービス事業者に関する業務。
⑤地域支援事業の実施。
⑥地域包括支援センターの設置と運営。
⑦市町村介護保険事業計画の策定を3年ごとに行う。
⑧保険料に関する業務、介護保険の財政運営。

理由2「地域事情や住民(利用者)のニーズが異なる」

地域ごとに
・高齢者の人数や割合
・介護を必要としている世帯数
・地域性(交通事情や土地柄や発展性)
・介護サービス提供事業所や社会資源の種類や数

が異なってくるために全国一律では対応しきれなかったり過剰供給になってしまう可能性があります。
したがって、地域ごとにローカルルールや権限を持たせることは必要だと言えます。

◆ローカルルールの大きな問題点

あたかも、介護保険制度上ローカルルールは必要かのように書いてきましたが、実は大きな問題をはらんでいます。

問題点①「柔軟な判断を求めるために行政ばかり気にする事業所」

介護関係法令や法規、通知の中には抽象的な言葉が使われていることが多々あります。

「概ね」
「遅滞なく」
「特段の事情がある場合を除き」
「定期的に」
「緊密な連携を図り」
「同等の資質があると見込まれる者」

解釈通知などでハッキリとした日数や状況が明らかにされているものもありますが、ハッキリわからない場合は直接行政に問い合わせることになります。

そしてその判断は担当行政課が出すわけですが、地域によってその可否や日数等の判断が違う場合があります。

「地域性や実情に合わせた柔軟な判断」と言えば聞こえがいいですが、同じ地域でも事業所ごとで違う場合があります。

例えば、「地域包括支援センター」の専門職の配置基準は
・主任介護支援専門員
・社会福祉士
・保健師(又は経験のある看護師)

の3職種の配置が義務付けられていますが、社会福祉士が急に退職してしまった場合はどうなるのでしょうか。

普通は配置基準を満たしていないので、運営不可能になるはずですが、行政に泣きつくと
「主任ケアマネを社会福祉士に準ずるということにして、もうひとり主任ケアマネを配置すればOK」
という判断が出たりします。

つまりその事業所では
・主任ケアマネ
・主任ケアマネ(社会福祉士に準ずる)
・保健師

という配置で運営することになります。

緊急的な措置なのでしょうが、「準ずる」で全てが通るのなら国家資格も価値や意味を持ちません。
そもそも、「何故、社会福祉士が辞めるに至ったのか」という事業所内の闇にメスを入れていく方が重要なのではないでしょうか。

そして、地域ごとではなく事業所ごとで行政の判断が変わってくれば権限委譲における「権利の濫用」ではないでしょうか。

ひいては
「利用者と向き合うよりも行政と向き合いシッポを振っていた方がスムーズな運営ができる」
と判断する事業所が増えてしまうのは自然の摂理かと思われます。

問題点②「行政の判断が全て正しいとは限らない」

行政は権限委譲をされているのですから、「担当課の判断は正しい」と思われがちです。

しかし、行政は指導や判断をしますが、それが間違っていて介護報酬が入ってこなかったり、不利益な取り扱いとなってしまっても「法的な責任は負いません」

片手落ちで一方通行な制度なのです。
もちろん、裁判を起こし勝訴すれば補償してもらうことは可能でしょうが、事業所の運営許可や指定認可という手綱を持っているご主人様に逆らえるはずがありません。

例えば、訪問介護での「散歩同行」については
「利用者の趣味嗜好や気分転換の為という理由なら介護報酬の算定不可」
という自治体が多くあります。

他の理由であっても
「閉じこもり防止のためならデイサービスを利用しなさい」
「リハビリ目的ならデイケアや訪問リハビリを利用しなさい」

ということのようです。

「何がなんでも介護サービスや介護保険を使って散歩はさせないぞ」
という行政の強い意志を感じます。

もちろん、デイサービス利用時に行事やレクの一環として散歩をすることは可能です。
しかし、好きな所を自由に自分のペースで散歩する場合は介護保険を使えない行政が多く存在するのが現実です。

問題は算定可能な地域と算定不可能な地域が存在するという点です。
ある地域では介護保険で散歩ができて、ある地域では散歩ができない、という状況は行政の判断に任せてしまっていいのでしょうか。

それこそ全国一律な判断が求められる案件ではないかと思います。

問題点③「介護施設の虐待認定も基準がない」

介護事業所の虐待認定も市区町村等の行政が行います。

もちろん、明らかな暴力や縛る、つねるなどの行為(身体的虐待)があった場合は即座に「虐待認定」をされます。

しかし、「心理的虐待」のような言葉の暴力や「ネグレスト」のような故意か過失かわからない虐待の場合は、行政の判断はまちまちです。

例えば、利用者に向かって
「いい加減にしろ、ふざけるな!」
と大きな声で言った場合、心理的虐待に当たるかと思われます。

しかしその判断は行政によって異なってくるので、即座に虐待認定をする地域もあれば
「虐待とは言えないけど不適切なケアですね。改善して下さい」
で終わってしまう地域もあります。

先程の散歩同行の案件もそうですが
「判断基準が統一されていないとマズい」
「ローカルルールが存在することは不適切」

と思われることが市区町村に権限委譲をされていることは大きな問題だと言えます。

◆まとめ

ちなみに私も認定調査員初任者研修の申し込みに行政の担当課へ出向いた時に「ローカルルール」に苦しめられました。

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ローカルルールが必要な場面があるのは理解できますが、必要以上に行政へ権限委譲をしてしまうと「権利の濫用」となり、事業所や現場職員や利用者が泣き寝入りをしなければならない状況が発生することになります。

悪法でも従わざるを得ないのは確かなのですが、現状に即していなかったり、曖昧なままでは問題があることについては「ローカルルールを廃止」していくようなアクションが必要です。

誰がどうやってどういうアクションを起こしていくかについては、現場職員単位では声が届きにくいので、事業所や社協や職能団体単位でのアクションが有効かと思いますが、そもそも「ローカルルールには問題がある」と感じている業界人がどれだけいるのでしょうか。

行政にシッポを振り現場を締め付ける日々では、良くなっていかないばかりか、せっかくの業界の伸びしろも台無しです。

現場職員単位でも、介護技術をマスターするだけではなく、制度や仕組みや関係法令についての知識を蓄えることをお勧めします。

自分が日々行っている介護や業務がどういう根拠でやっているのかがわかり、制度上の問題点や改善点も見えてきます。
但し、問題点がわかっても改善する職権も権限もなく、意見も通らない環境に愕然とすることでしょう。

しかしそれが介護業界の現状なのです。
上司や経営者のおでこに「行政命」という刻印があるのが見えてくることでしょう。

コメント

  1. とも より:

    こんにちは
    同じ特養の中でも階によってローカルルールがありますよ笑
    階によって…というよりはリーダーによって、かな。利用者さんのために、と言いつつ、自分の働きやすいようにリーダーが勝手に変えてしまうという事態が発生してます。
    リーダーがリーダーのまま異動すると、まあ大変「これはこうしよ」「この方がいいよね?」聞いているつもりでも、半ば強制
    しかも、すっごく単純なことです。おむつの在庫管理、頓服薬の頼み方、そうじの時間、入浴の割り振りなど
    今まで何年もいた職員(馴れて頭が固くなっていることめありますが)は振り回されて、ストレスフルです
    話題変わってしまい、すみません

  2. 山嵐 より:

    >ともさん
    こんにちは~
    コメントありがとうございます^^
    確かに同じ事業所内でもありますね。
    「ユニットの特色」とかいう建前ですけど、振り回される周囲からしてみたら迷惑な話ですね。