夜勤明けで帰ろうとしていた職員が「事故現場を発見」してしまう不幸な状況と問題点

Pocket

先日、夜勤明けで定時を回り帰ろうとしていた職員が「事故現場」を発見しました。

「事故現場」と書くと大げさですが、利用者が自分で勝手に転倒し怪我をしてしまった場合も「介護事故」として扱われます。

介護方法に問題があったり、職員の不手際で事故が発生してしまったのなら「介護事故」と言われても理解できますが、職員に何の落ち度もない場合も「介護事故」と言われることには疑問を感じます。

但し、「介護現場での事故」と読み替えれば百歩譲って納得ができます。

スポンサーリンク

◆事故の概要

立位は取れるが、自分で歩くことができない利用者(普段は車椅子で職員が介助をして移動)が、朝食後に本人の希望で居室で臥床していました。

午前9時過ぎ、居室から「わーわー、助けてー」等の大きな声がしているのを、退勤しようとしていた夜勤明けの職員が気づき様子確認の為に訪室しました。

すると、そこには利用者が興奮状態で床に座り、額から多量の出血をしていました。

すぐに看護師に報告、家族へ連絡し病院受診の運びとなりました。

以上が概要になりますが、介護施設ではよくあるパターンの事故になろうかと思います。

しかしこの場合、「不幸・不運・不憫」だと感じてしまうのは「第一発見者である退勤しようとしていた夜勤明けの職員」です。

◆第一発見者が不幸な理由

本来、退勤しようとしていようが、定時を回っていようが、夜勤明けであろうが、利用者に事故が発生した場合は「人道的」にも「職業倫理的」にも対応をするのが当然です。

そのお陰で「早期発見」ができ、「初期対応」がスムーズにできたのですから、謂わば「(大げさに言えば)命の恩人」「お助けマン」「介護職員の鑑」だと言えます。

しかし、現状の介護現場ではそうはなりません。

理由①「第一発見者に大部分の責任が掛かる」

もちろん、看護師や家族に報告や連絡を行い、医療機関へ繋げる初期対応者となるのですが、第一発見者であるが故に大きな責任がのしかかってきます。

・状況の説明

・事故報告書の作成

などの業務が増えてしまいます。

ある程度の所まで行って、あとは日勤帯の職員へ引き継ぐことも可能ですが、その「ある程度の所まで」を終わらせるのに、結構な時間が掛かってしまいます。

既に16時間の夜勤業務を徹夜で行ってきた身体と頭は悲鳴をあげていることでしょう。

残業をして業務をこなす必要があります。

夜勤明けの解放感は格別で

「無事に夜勤を終えて休日を謳歌しよう」

という気分だったはずのテンションが一気に下がり、状況によってはその休日中もその利用者の状態が気になってしまい休んだ気にならなくなる可能性もあり得ます。

せっかく、無事に夜勤を終え、解放感に浸りかけていた第一発見者の夜勤明けの職員をとても不憫に感じてしまいます。

理由②「何故か悪者扱い」

第一発見者は「事故現場を発見した」というだけであって、何か悪いことをしたわけでも何でもありません。

しかし、介護現場では、何故か第一発見者や最後に対応をした職員を悪者に仕立て上げようとします。

「ケア方法に問題があったのではないか?」

「対応が不十分だったのではないか?」

「家族にちゃんと説明と謝罪をして理解を得なさいよ」

ということを言われてしまいます。

謝罪に関しては

介護職員は「謝罪」というものの最前線に立たされている職種だと思います。 「最前線」どころか「四面楚歌」状態、「謝罪の受...

という記事で書いたように「自分が悪くない場合は謝る必要はない」と思っています。

しかし、どんなに自分が悪くない状況でも、「どうにかして介護職員の責任にしたい」という根強い業界の考え方が現場職員を苦しめます。

「寝かせたベッド上のポジショニングに問題があったんじゃないか?」

「利用者の状態(活気がある)を状況的に判断して、他の対応方法があったんじゃないか?」

「もっとこまめに様子観察をしていれば未然に防げたんじゃないか?」

などという知恵熱が出そうなことを言われ、「どうにかして介護職員を悪者に仕立て上げよう」という熱意と情熱さえ感じます。

そもそも、インシデントレポートには「利用者・家族への説明と謝罪の状況」という項目があり、「謝罪が前提の報告書」になっているのです。

何も悪いことはしておらず、退勤しようとしていた夜勤明けの職員は一気に不幸な状況に陥ってしまうのです。

◆現状の問題点

夜勤明けで、利用者の声に気づかずに帰っていれば、こんな大ごとに巻き込まれなかったのに、「気づいてしまったが故に責任を負わされ悪者扱いまでされる」という状況はとても大きな問題を孕んでいると思っています。

問題点①「気づかない職員の方が働きやすい」

介護職員にとって「気づき」は大切な専門性のひとつです。

しかし、「気づきすぎると責任が大きくなり悪者扱いまでされてしまう」という状況なので、業務量も増えてしまい、肉体的にも精神的にも疲弊してしまいがちです。

同じ給料なのに、「気づかない職員の方が責任や業務が少なく働きやすい」という、いびつな環境になってしまっています。

これでは、本末転倒であり「正直者がバカをみる」状態で正常な運営だとは言えません。

「よく気づく職員ほど疲弊していき、辞めていく」という悪循環に陥っていると言えます。

問題点②「気づいても気づかないフリをする職員が出てくる」

「気づいた職員が損をする」という環境であれば「気づいても気づかなかったフリをしよう」という職員が出てきてもおかしくはありません。

要は「隠蔽」若しくは「ネグレスト(介護放棄)」ということになりますが、現在の介護現場の環境が生んだ「個々の自己防衛」でもあります。

そういう状況はとても不健全で、人道的にも倫理的にも不適切な考え方や行為になるのですが、その原因はやはり「職場環境」にあります。

職場環境が変わらない限り、隠蔽する職員が出て来るのは必然です。

隠蔽だけを責めれば、気づく職員ほど早期に退職していくでしょう。

健全なケア業務は、健全な職場環境と業界全体での意識改革が必須なのです。

◆まとめ

リスクや事故に気づいた職員は、介護職員としての資質が高く、本来は褒められる必要がある存在だと思います。

業界全体で上司や家族も

「事故を起こしやがって」

という目線ではなく

「早期に発見し対応してくれてありがとう」

という考え方であれば、介護職員にとっても働きやすい環境になりますし、なにより健全な業務遂行が可能になります。

事業所としても、第一発見者ばかりに過大な責任や負担を押し付け、揚げ足を取るやり方をせず、業務を分担し事業所全体の問題として扱っていく体制が必要です。

どちらにしても、現状の人員配置では「事故が発生するのは必然」です。

「職員が何人いればいいんだ?」

ということではなく、24時間付きっきりのマンツーマンの介護ではない以上、大なり小なり必ず事故は起こります。

まずは、そのことを理解した上で、職員が健全に業務を遂行できる環境を整備できれば、必然的に利用者も健全な環境で過ごすことが可能になります。

逆に言えば、職員が不健全な環境で働いている以上、利用者も不健全な環境で過ごしているのです。

コメント

  1. とも より:

    こんばんは
    勤務時間終わりがけのトラブル、嫌ですね。利用者も好き好んで事故起こしてるわけじゃないですけど…嫌なものは嫌です。

    気づく職員ほど…、気づかないふり…
    どちらもありますね。最近では服薬忘れがありましたが、箱に入っているのに「気づかなかった」と宣ってましたよ。職員が原因の事故は理解できませんわ。事故を隠す職員もいるし、なかなかカオスです。

    今日は夜勤ですが、7時00分59秒には帰りたいです。

    • 山嵐 より:

      >ともさん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      介護現場はカオスだらけですね。
      夜勤、無事に帰れましたか?
      お疲れ様です^^

  2. ウンコマン より:

    事故報告書を残業して書いてますが、山嵐先生の職場は残業代は出ますか?
    ちなみに僕の所は出ません!

    ウンコ!(´・ω・`)

    • 山嵐 より:

      >ウンコマンさん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      当然、残って書類の作成をしたら残業代は出ます(というか、最近出るようになりました)。
      介護職員に書類作成の時間や残業手当を出さないなら、書類をさせてはダメですし、する必要もないと思っています。

      • とも より:

        山嵐さんのとこ、残業代出るのですね。
        ウンコマンさん、うちも出ません涙

        私「時間なので帰ります、事故報告はまた後日」
        上司「事故報告を書いてから帰ってね」
        私「それは職務上の命令ですね?時間外の労働の命令ですね?」
        ああ、こんなこと言ってみたいなあ。

        • 山嵐 より:

          >ともさん

          こんばんは~
          コメントありがとうございます^^

          ともさんの所も残業代出ないのですね><
          そろそろ労基署の出番かもしれませんね。

          私の所は、モニタリング等の書類をするのに残業をする場合は、残業手当をつけてもらえるようになりました。
          少しずつですが前進しています。

  3. MOCO より:

    まさに今日、その夜勤明け発見者でした。
    某利用者さんは認知症で日中問わず徘徊があり、昨日は消灯後より一睡もせずに
    徘徊をしていました。そして明け方4時に転倒事故がありました。
    あ~~~。なんでぇ~?
    もちろん、声掛けをし、付き添い、居室誘導を繰り返ししていたのですが…。
    外傷、痛みの確認、バイタルチェック、就寝介助してから、事故報告書の作成(途中まで)。
    それから起床介助を行い、朝食介助。
    転倒した本人は大事には至らなかったですが、後頭部を打っているだけに心配です。
    朝の仕事が一通り終わってから、家族様に電話連絡をし、主任、ケアマネとカンファレンスして事項報告書を完成させて退社。1時間のサービス残業。はぁ~( ノД`)シクシク…

    • 山嵐 より:

      >MOCOさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      事故やインシが発生すると結局そうなってしまいますよね><
      とても不幸で不運で不憫に思います。

      どう考えても自分は悪くないのに、何故か罪悪感までつきまといます。
      手取り月20万円前後でこれほど責任が重い仕事はないですね。
      ひとまず、全てを忘れてゆっくり休みましょう(なかなかできないかもしれませんが)。

      旅行、オススメですよ^^

  4. ダメ人間 より:

    こんばんは。ブログの移転作業、お疲れ様でした。

    >ともさん・ウンコマンさん
    医療・社福法人の通所で経験がありますが、ヒヤリと事故報の両方とも全ての法人でサビ残でした。
    両方とも残業する場合は管理者の承認が必要で、通常業務内に終わらせなかったこっち=介護職が悪いというクソな考え方なので、認められる訳がありません。
    介助が必要な人 や 徘徊など問題行動がある利用者を完全無視なら記入できますが、ダメ人間な自分でもそんな事したらヤバいという事は分ってるので、サビ残でしたね。

    >山嵐さん
    もし労基へ行くのなら、余程の覚悟=二度と福祉の道へ来ない位の覚悟がないと厳しい感じじゃないですか?
    何度か書いた事ですけど、本当にこの業界って
    ・何処で誰と繋がっているのか?
    ・何処でどんな経緯で情報が伝わるのか?
    分らないですし、例えば理事だけに言った事が、何故か近郊にある他事業所の居宅cmに伝わっていたり等ドン引きした経験が数えきれない程あり、世間って案外狭いですから、覚悟が必要なんじゃないですかね?

    • 山嵐 より:

      >ダメ人間さん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      そうですね、実名で労基へ通報すると覚悟が必要ですね。
      私の事業所の場合は、労災が相次いだ結果、労基署が行政指導に入ってきたので、その流れでサビ残も一掃された経緯があります。

      世間は本当、狭いと思います。
      でも、今は売り手市場になりつつあるかな、とも思っています。
      間違ったことさえ言わなければ、どうにでも復活できる気がします。
      介護福祉士とケアマネ資格はそのためのセーフティネットなのかもしれません。