介護施設の個室に内鍵がついている理由「内鍵って必要?」

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介護施設でユニット型であれば全室個室になります。

他にも従来型個室があります。

ユニット型と従来型ではどう違うのか言えば、簡単に説明すると「ユニットという生活空間(ひとつのコミュニティ)に共有スペースが存在するのがユニット型で、病院の個室のような造りになっているのが従来型」と言えます。

図解すると下記のようになります。

【ユニット型個室】

【従来型個室】

【出典】みんなの介護

ユニット型特養とは、全室個室の特別養護老人ホーム。介護自体も少人数グループのため、入居者に合わせたケアができるのが特徴。従来型との違いやメリット・デメリットなどを紹介します。

病院や他の施設はどうなのかはわかりませんが、私の勤務するユニット型特養では、個室全室に内鍵がついています。

外鍵をつけてしまうと、利用者ではない第三者(職員など)が外から鍵をかけて部屋から出れないようにしたり閉じ込めてしまうことになり「身体拘束」になってしまいます。

ですから外鍵は一切ついていませんが、内鍵がついています。

つまり、居室内にいる利用者が内側から鍵をかけれるようになっているのです。

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内鍵は必要?

一般的に内鍵がついている理由としては

「他者の侵入防止」

「プライバシーの確保」

「鍵をしようがしまいが自由」

ということになります。

介護施設での個室の内鍵も恐らく同じような理由でついているのだろうと思われます。

しかし、今でも疑問に思っているのが

「介護施設での個室の内鍵って本当に必要?」

ということです。

利用者に内鍵をかけられてしまうと、様子確認や巡視の際に利用者に声を掛けて開けてもらったり、夜間帯であれば安眠の邪魔をしないようにマスターキーなどでソッと鍵を開け室内の様子を確認します。

よくテレビで観るような、「寝起きドッキリの開錠方法を地でいく」わけです。

そして室内の利用者の様子を確認後、ソッと退室します。

退室後、再びマスターキーを使って施錠はしません。

本来はそうするべきなのかもしれませんが、特段の約束やケアプランに処遇として記載が無い場合は「内鍵は開けておいてくれる方が業務の手間が省けるから」です。

過去にそういう約束やケアプランに記載されたものを私は見たことがないので、殆どの場合は開錠後、施錠しません。

しかし、そうなると「どうせ定時の巡視で職員が開錠する必要があるんだから、そもそも内鍵をかけないで欲しい」ということに行きつきます。

介護現場では利用者に対して

「鍵は閉めないで下さいね」

「巡視に回りますから開けておいて下さいね」

と言うことが当たり前のようになっています。

そういうことがスタンダードになってくると

「あれ?そもそも居室の内鍵って何のためについてるの?」

という疑問が湧きあがってくるのです。

内鍵がついている理由

職員にとっては施錠自体して欲しくはないのですが、介護施設の個室に内鍵がついている理由を具体的に考えてみたいと思います。

理由①「プライバシー保護の建て前」

当然、利用者にだって尊厳もあればプライバシーもあります。

しかし実際、介護現場では利用者のプライバシーはあって無いようなものです。

定時や適宜、様子確認を行いますし、利用者の状態によってはトイレの個室内でも同室します。

つまり、プライバシーよりも安全の方が優先されるのです。

かと言って、プライバシーをおざなりには出来ないので、「形だけ、表面上、建て前として、内鍵を設けてプライバシーを守る選択肢も捨ててはいませんよ」という「ささやかな配慮のお飾り設定」になっているのです。

理由②「他利用者の他室侵入を防ぐ」

認知症のないクリアな利用者もいれば、重度の利用者もいます。

認知症の症状によって、徘徊や他室侵入行為もよくある出来事になります。

一番迷惑を被るのは、自分の居室に他の利用者が侵入してきてしまう利用者です。

職員ならまだしも、認知症の徘徊老人が「うーうー」などとうめき声をあげながら部屋へ入ってくるのは確かに恐怖でしょう。

部屋の中の物を触られたり、何かされてしまう心配も出てきて不安にもなります。

職員も、徘徊利用者が他の利用者に迷惑を掛けてしまうと二重のリスクになります。

ですから、こういう場合のひとつの対応策として、「部屋に侵入されたくない利用者は内鍵を掛ける」ということも必要になってくるかもしれません。

そうなると、お互いに手間ですが、利用者には施錠をしてもらって、職員は都度、開錠施錠をすることになります。

内鍵のリスク

クリアな利用者の場合は、理由があって施錠をするので意思疎通も図れますが、認知症者の場合、何か理由があるにしても無いにしても意思疎通が図れない為に対応に苦慮してしまうことが多くなります。

施錠されていないと思っていた部屋が施錠されていたら、緊急時に遅れを取ってしまう可能性もあり得ます。

早期発見、早期対応ができません。

他にも、他室侵入した利用者が内鍵を掛けてしまう可能性もあり得ます。

内鍵があることによって、新たなリスクが発生する可能性も否定できないのです。

「マスターキーで開錠する」と簡単に書きましたが、マスターキーは1本しかありませんし、基本的にユニットでは管理していません。

出入りの激しい介護現場で管理していると、悪意を持って合鍵を作る人が出てくる可能性も否定できませんし、紛失のおそれもあるためです。

ですから事務所で管理されていて、その都度、取りに行ったり持って来て貰うのにある程度時間が掛かってしまいます。

数時間ごと(若しくは数分ごともあり得ます)にそんな対応をしていたら、「介護どころじゃない」のは想像できます。

頻繁に施錠してしまう利用者の居室だけ合鍵を作って「持ち出し厳禁」とした上でユニットで管理する、という方法を採っているユニットもありますが、「そもそも内鍵が最初から無ければそんな対応も不要だった」と言えます。

最後に

個室の介護施設でも、居室に内鍵がついている事業所と、ついていない事業所があるかと思います。

人の命を預かる介護現場としては「安全や業務のスリム化」を最優先で考えると、「個室の内鍵は無い方がいいかな」という印象です。

他室侵入の対応策にしても、侵入されないように施錠するよりも、「他室侵入する利用者をどうにかする方が根本的解決」になります。

こういう話をすると「プライバシーより安全を優先するのは人権侵害だ」「利用者にも選択の自由があって然るべきだ」などという人が出てきそうですが、そういう人はそもそも「適宜の様子確認や常時の見守りや介助を提供する介護施設に入居する必要はない」と言えます。

自分(又は家族)が選んだ施設なのですから、その施設の決まり事やルールや規約に従って生活をする必要があるのは当然です。

我々が提供しているのは、介護保険内での介護サービスであって、おもてなしの宿ではないのです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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コメント

  1. とも より:

    こんばんは
    勤務する特養では、内鍵はありません
    外鍵はついてます。職員が持つ鍵(階段や会議室など施設内大抵のマスター)で施錠解錠できます。
    さすがに、利用者が居室にいるのに鍵をする、なんてバカな真似は聞いたことありませんが(笑)
    利用者から「あの人(大声出して徘徊するおじいさん)入ってくるから、鍵を閉めて」と切実に訴えられたことがあります。
    …きっと山嵐さんなら、どんな対応に落ち着いたか、落ち着かざるを得なかったか分かりますよね

    • 山嵐 より:

      >ともさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      おっと、そうなんですね。
      内鍵が無くて外鍵があるパターンなのですね。

      その案件について普通に考えると「身体拘束同意書を取って徘徊老人の居室の外鍵を閉める」という方法があるかと思いますが、事業所として身体拘束はできるだけ避けようとするので(非代替性という要件もありますし)、「人員が許すならマンツーマンでの付き添い」か、「サ担後に向精神薬の投与で徘徊を抑える」という対応でしょうか。

      • とも より:

        考えてくださってありがとうございます。

        確かに身体拘束になるのでダメという判断でしたが、そこからが涙
        「じゃあ、我慢します」と一旦はひいたその利用者さん、中で紐で結んでしまって開かなくなり(自分で閉じ込められる)ナースコールで助けを求められ、ベランダの窓の鍵を開けてもらってぼくらが居室に入り、紐を切るということになりました。
        まだハッキリした利用者だから、窓の鍵を開けてもらえましたが、認知症で伝わらなかったらと思うと、ゾッとします

        • 山嵐 より:

          >ともさん

          こんばんは~
          返信ありがとうございます^^

          なるほど、現実は全く想定外の内容でした><
          これからの時代は、そういう想定外のことがどんどん起こってくるのでしょうね。
          貴重な体験談、ありがとうございました!