【介護事件考察】介護職員8人が退職後、1か月で入居者が6人亡くなった老人ホーム

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最近話題になっている「1か月で6人の入居者が死亡した老人ホーム」の報道について、当ブログでも考察していきたいと思います。

まず、このセンセーショナルな報道タイトルや第一印象や世間のイメージは

「異常事態」

「世紀末だ」

「あってはならないこと」

「介護現場の闇が浮き彫りになった」

「また介護施設の事件だ」

というようなことになろうかと思います。

私の第一印象も同じような感じなのですが、当ブログでは事実のみを受け止めた上で、介護の専門知識を交えて現場で働く現職の介護職員のひとりとして考えてみたいと思います。

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ニュース概要

鹿児島県鹿屋市の老人ホームで、今月までのおよそ1か月間に、入居者6人が相次いで死亡していたことがわかりました。県などは21日までに施設を立ち入り検査して、運営実態などを調べています。

立ち入り検査が行われたのは、鹿屋市の住宅型有料老人ホーム「風の舞」です。県と施設によりますと、この老人ホームでは先月から今月にかけてのおよそ1か月間に、入居していた高齢者およそ40人のうち、80代から90代の女性6人が相次いで亡くなったということです。
情報提供を受けた県は、今月9日に施設から聞き取り調査をしたあと、今月16日、鹿屋市とともに、老人福祉法などに基づき立ち入り検査をしました。

この施設では、8月から9月にかけて介護職員8人が退職し、夜間は施設長がほぼ1人で対応していたということですが、老人ホームを運営するグループは21日に会見を開き、「職員の退職と入所者の死亡に因果関係はない」と説明しました。
県は老人ホームの運営が適切に行われていたかなど調べています。

【引用元】MBC 南日本放送

「住宅型有料老人ホーム」とは?

一概に「老人ホーム」と言っても施設形態や種類には様々なものがあります。

報道では十把ひとからげに「老人ホーム」とだけしか報道されないこともありますが、老人ホームには「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「有料老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「グループホーム(グルホ)」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などなど、たくさんあります。

今回、報道された老人ホームの施設形態は「有料老人ホーム」の中の「住宅型有料老人ホーム」になります。

「有料老人ホーム」の種類

まずは、この施設形態について知っておく必要があります。

「住宅型有料老人ホーム」は「有料老人ホーム」の中に位置します。

つまり、「有料老人ホーム」の中にも以下の三種類があるのです。

①介護付有料老人ホーム

「有料老人ホーム」と聞いて、何となく我々がイメージしているのは「介護付有料老人ホーム」になります。

都道府県による「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける必要があります。

事業者のスタッフが介護サービスを提供します。

人員配置基準についても介護保険法で基準が設けられており、「生活相談員」「看護職員または介護職員」「機能訓練指導員」「計画作成担当者(ケアマネ等)」「管理者」の配置が求められています。

入居条件は「原則65歳以上」「自立から要介護(但し軽度まで)」となっています。

②住宅型有料老人ホーム

あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、実は結構多く存在しています。

何故なら、「介護付有料老人ホーム」は自治体ごとの計画に基づいて開設できる居室数の制限を受ける「総量規制」の対象であるのに対して「住宅型有料老人ホーム」はその規制を受けることがないからです。

都道府県や行政による「指定は不要」です。

基本的に、外部の介護サービス(訪問介護等)を利用します。

人員配置基準は、特にありません(適正な運営が出来る範囲内であれば自由です)。

入居条件は「60歳以上」「自立から要介護(但し軽度まで)」となっています。

今回、報道された老人ホームは、こちらの「住宅型有料老人ホーム」になります。

③健康型有料老人ホーム

こちらの種類の有料老人ホームは年々減少傾向にあり、現在はほとんど存在しません。

上記①と②だけで有料老人ホームの99%以上を占めているため(2017年時点)、「健康型有料老人ホーム」の解説は割愛させて頂きます。

「事件」なのか?

今回の報道をまとめると、問題点として浮かび上がってくるのが

①1か月で6人の入居者が死亡(85歳以上の女性ばかり)

②8月から9月にかけて介護職員8人が退職

③複数の虐待通報があった

④夜間は施設長1人で対応

という4点になろうかと思います。

肝は「虐待により入居者が死亡したのかどうか」ということになります。

虐待と言っても暴力的、侮蔑的な「明らかな虐待」から介護を放棄してしまうような「隠れた虐待」があります。

どちらにしても、虐待があれば間違いなく事件ですが、今回はネグレクト(介護放棄)のような「隠れた虐待」に焦点が当たっているように感じます。

そりゃ、介護職員が一気に8人も退職し、夜間は施設長一人で対応していたのならネグレクトが発生してもおかしくない状況です。

ネグレクトがあったのかなかったのか、ネグレクトがあったとして入居者6人の死亡との因果関係があるのか、という点を冷静に考えなければなりません。

因果関係があれば「事件」ですし、なければ「事件ではない」のです。

施設側はその「因果関係を否定」しています。

①1か月で6人の入居者が死亡(85歳以上の女性ばかり)

一見、「八つ墓村」のような様相です。

一般社会に生きていると同じ家庭や生活の場で1か月に6人が死亡するなんてあり得ない状況です。

しかし、介護施設では普通にあり得る話になります。

いつ何時、どんなに健康に見えても高齢者になると「急変」はありえます。

それがたまたま重なってしまえば起こり得る状況になるのです。

②8月から9月にかけて介護職員8人が退職

私にしてみれば、こちらの方が「事件」です。

ほぼ全員の介護職員が一気に退職するなんて、示し合わせたとしか思えません。

そうせざるを得なかった理由があるのでしょう。

噂ですが、待遇(夜勤手当等の収入面)が悪化した結果のようです。

元々少ない介護職員の収入を減らせば、こういうことが起こってもおかしくはありません。

そして、これ以上、介護職員の収入を減らすなんて正気の沙汰ではありません。

これこそが「事件」です。

③複数の虐待通報があった

内情を通報するくらいですから、この有料老人ホームのことをよく知る人達からの情報提供でしょう。

虐待の種別は「ネグレクト(介護放棄)」だと思われますが、仮に死亡との因果関係がなくても、本当に介護放棄があったのだとすれば虐待として扱うのが当然です。

④夜間は施設長1人で対応

これも一種の「事件」でしょう。

「施設長」という肩書き上、施設のトップなのでしょうが、会見をした運営グループ統括者の医師が存在する以上「雇われ施設長」だと推測できます。

経営者ではない雇われ施設長がほぼ毎日夜勤を一人でこなしていたのだとすればそれは「事件」です。

介護職員が一気に8人も辞めたのですから、夜勤をする人材がなく苦肉の策だと思われますが、通常我々介護職員が1回こなすだけでもフラフラになる16時間夜勤を30日近くも入れば入居者のネグレストどころか、夜勤者の命に関わってきます。

労基法上の問題にもなろうかと思います(経営者なら別ですが雇われ施設長なら問題です)。

私でも過去最大月9回の夜勤をやったことがありますが、それは月9回の公休と月9回の夜勤明けがあるから何とかこなせただけであって、公休の無い月30回なんて到底無理です。

意識朦朧として意図せぬ「ネグレクト」が発生してもおかしくはありません。

しかしながら、本当の闇は「人員配置基準」が存在しないため、介護保険法上では違法でも違反でもないことです。

統括する医師の会見

経営者であるグループを統括する医師の会見では

「適正な体制ではなかったかもしれない」

とした上で

「(死亡した入居者の)6人は終末期だった。職員の退職と死亡との因果関係はない」

と発言しています。

ここで違和感を感じるのが、

「住宅型有料老人ホームの入居条件は軽度までだったのではないか?」

「6人も終末期の入居者を抱えていたことが問題ではないか?」

ということです。

しかし、それは「他の入所施設を探している矢先の出来事だった」「急に状態が落ちた」と言われれば説明がつきます。

「虐待はなかった」

実は既に行政の結論は出ています。

鹿児島・鹿屋市の老人ホームで、およそ1カ月で入居者6人が相次いで亡くなった問題で、施設を調査した鹿屋市は、「入居者のケアはなされていて、虐待はなかった」との判断を明らかにした。

【引用元】FNN

鹿児島・鹿屋市の老人ホームで、およそ1カ月で入居者6人が相次いで亡くなった問題で、施設を調査した鹿屋市は、「入居者のケアはなされていて、虐待はなかった」との判断を明らかにした。   この問題は、鹿児島

素早い対応です。

遅いよりも早い方が良いのですが、早すぎるのも違和感を感じてしまいます。

しかし、そう結論付けられた以上、今回の報道に関して「虐待はなかった」ということになります。

まとめ

結果的に、今回の報道に関して「虐待はなかった」と結論付けられました。

ですから「事件ではない」「不適切運営と死亡の因果関係はない」ということになります。

日中は外部事業所の看護師に対応をさせていたようです。

人員配置基準が定められておらず、基本的に外部の事業所を利用する住宅型有料老人ホームの運営基準の範囲内であると言えます。

しかし、本当に闇深いのは

「介護職員ほぼ全員の8人が一気に退職したこと」

「施設長がほぼ毎日夜勤をやっていたこと」

「行政がずさんな運営(人員不足、口腔ケアが不十分、室内の清掃が行き届いていないこと)は虐待ではない判断をしたこと」

の3点になるのではないでしょうか。

これらは、「介護保険法や老人福祉法上は常識の範囲内」であったとしても、世間の常識から見れば「異常事態であり非常識な事件」にほかなりません。

これでは「介護現場の常識は世間の非常識」という皮肉を真摯に受け止めざるを得ません。

本当に虐待をされていたのは、介護職員であり施設長なのではないでしょうか。

その闇に踏み込まないと、今後もこういった異常事態や事件がやむことはないでしょう。

介護職員が幸せでない以上、入居者や利用者も幸せにはなれないのです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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コメント

  1. デイちゃん より:

    こんにちは。
    外部サービス利用型の入居施設って、基本施設内ではほぼ介助しないですね。
    お金をとっての軽度なサービスはするとは思いますが。

    私のデイにも、外部サービス利用型の有料やサ高住の入居者が利用してるのですが、入居施設ではほったらかしみたい。
    介護5の重度寝たきりでも、目やにやよだれつきっぱなし、着替えもしてなくて失禁したまま、オムツ交換はしてなくて便まみれだし、たぶん食事介助とかもしてないみたい。
    で、とあるサ高住の利用者が、連続で4人亡くなったんですよ。
    「え!?〇〇さん亡くなった!?昨日来た時、めちゃ元気だったよ。ご飯も食べて普通に歩いてたのに」
    「ちょっと~、あそこ点滴で洗剤いれてるとかじゃないの??」
    とか言ってたんですけど。
    でも水分摂取なども十分してないみたいで、熱が出ても放置みたいだったから。
    で、そこは金銭管理も適当で、預り金がなくなってたりとか。家族が出金履歴を見せろと言っても、そんなのないです~だったらしいです。

    結局介護施設って、やってる人の良心だけなんですよね。歯止めになるのは。
    そういう施設が野放しになってるのは、行政の責任だと思うのですが。

    • 山嵐 より:

      >デイちゃんさん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      なかなかヤバい惨状ですね。
      それでも平然と運営できているとしたら、完全に行政の責任ですね。

  2. とも より:

    こんばんは
    このニュース、衝撃的でしたね。内容もですが、理事長?の態度にも笑
    藤掛第一病院(近くなのです)の会見でも衝撃でしたが笑
    でも、リスクマネジメント上、簡単に非を認めてはいけないというのも分かります。あとで「自分で悪いって言いましたよね?」なんて言われたら目もあてられませんから。

    初めは「また特養の事件か」と思ったら、どうも違うみたいで、山嵐さんの解説勉強になりました。しかし、夜勤手当てを上げるのではなく下げる→職員辞めちゃうかも…と考えつかない経営者も、かなり血迷ってますね

    • 山嵐 より:

      >ともさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      あの会見の態度を見ると「施設内ではもっと凄いんだろうなぁ」「ワンマン経営なんだろうなぁ」という印象ですね。
      簡単に非を認めないマネジメント方法なのかもしれませんが、やっぱり印象は良くないですね(笑)

      このご時世で、まだ介護職員の給料を減らそうとするなんて血迷っていると言えますね。
      私も「住宅型有料老人ホーム」について調べながら書いたので勉強になりました。

  3. ちゅん より:

    「行政がずさんな運営(人員不足、口腔ケアが不十分、室内の清掃が行き届いていないこと)は虐待ではない判断をしたこと」

    ちゅんです。久しぶりにブログにお邪魔して、こちらの記事を興味深く拝見しました。
    続報があまり聞かれないなーとおもっていましたが、まさかの虐待ではない認定だったとは。行政もおそらくはこの施設に行き場のない人を受け入れてもらったり、ある種の持ちつ持たれつ関係があったかも、と想像してしまいますね。闇が深すぎる介護業界:(;゙゚’ω゚’):

    • 山嵐 より:

      >ちゅんさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      行政と持ちつ持たれつの関係自体が闇深いですね。
      事業所を狩るよりも行政から狩っていかないといけないのだとすれば絶望感しかないですね><