家族のありがちな苦情「介護施設に入所させたら認知症が進んだ」

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介護施設には「無知」だったり「理解がない」家族からの苦情やクレームが数々飛び込んできます。

その内容は多種多様ですが、よくありがちな苦情のひとつに「施設に入れたら認知症が進んだ」というものがあります。

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その苦情の謂わんとしていること

認知症が進んで嬉しい家族はいません。

だからこそ苦情になるわけですが、この場合、家族が謂わんとしていることは

・ちゃんとした介護をしてくれていないのではないか

・自分の身内(利用者)だけ関りが少ないのではないか

・レクリエーションや体操などの頭や体を使うことをしてくれていないのではないか

・プロとしての介護業務が達成されていないのではないか

ということに読み替えることができます。

確かに人員不足でレクや体操まで手が回らない日常があるのは事実ですが、現状での介護保険で賄われている介護施設では「どの事業所でも現状で精一杯のことはやっている」のです。

極論で言ってしまえば「介護施設に入所させて認知症が進んだ気がする状態がとても嫌」なら「介護施設を退所して認知症が進まない他の方法を考える必要がある」のです。

そこまで現場はひっ迫していて、そういう個別のクレームを受けても現実問題、どうすることもできないのです。

しかし、事業所側としては

「善処します」

「対応を検討します」

と言って更に介護職員にしわ寄せをしてきます。

人員の補充もされぬまま、しわ寄せされた現場職員は更に過重労働となり、耐えきれずに辞めていってしまう職員も出てきてしまいます。

そうなると、更に人員不足となり悪循環となってしまいます。

実際、認知症は進んでいるのか

この点に関しては個人的な要因が大きく、進行も人それぞれとなりますし、主観的・客観的に判断することはなかなか難しいのですが、よく言われるのが「家にいた時と何か違う」ということです。

その点に関して解説しますと

「そりゃ家にいた時とは、「環境も生活リズムも自由度も考えたり行動する頻度も対応している介護者も違う」のですから違って当然です」

①環境が違う

認知症の人は環境の変化に敏感です。

そして環境の変化が苦手です。

「施設入所」ということ自体が「大きな環境の変化」になります。

大きな環境の変化があれば、認知症が進行してもおかしくはありません。

つまり、「施設入所自体」が招いた結果なのです。

②生活リズムが違う

施設へ入所すれば食事の時間もほぼ決まっていて「規則正しい生活」になります。

多少の個々のリズムへの対応は可能ですが、そういうものを目指したユニットケアは既に破綻しているので、ある程度は施設のリズムに合わせてもらう必要があります。

今まで家庭で過ごしていたリズムとは違ってくるかもしれません。

そういうリズムの狂い(実際は規則正しいリズム)が、認知症を進行させるリスクになり得ます。

③自由度が違う

居室で勝手に飲酒したり喫煙したりすることはできませんし、夜更かしや買い食いや夜中に冷蔵庫の中の物を自由に食べたりすることもできません。

家庭のように自由気ままに生活することも集団生活の中ではある程度、制限されてしまいます。

そういう状況に「不自由さ」を感じ、段々と活気がなくなり、認知症が進行してしまうというリスクはあり得ます。

④考えたり行動する頻度が違う

今まで不完全ながら自分自身でやってきたことも、介護職員が援助したり支援したり介助することによって思考を巡らせて考えたり行動する頻度が低くなってきます。

「何か困ったら職員にやってもらえばいいや」

「座っていれば食事が運ばれてくる」

という三食昼寝付きの生活になってしまうと、認知症が進行する原因になります。

ですから、「自分でできることは自分でやってもらう」という方針があるのですが、それを本気で実行すると

「介護料を払っているのに何もしてくれない」

「自分(の家族)だけほったらかしにされている」

という新たな苦情を発生させてしまいます。

⑤介護者が違う

今まで家庭では、家族や身内が介護していたのに、施設に入ると介護者が「赤の他人の介護職員」になります。

身内と赤の他人では雲泥の差があります。

そして、家庭では「マンツーマン」だった介護が「利用者3人~20人に一人の職員配置」に濃度が薄まります。

厳密に言うと、知識や技術は介護施設の職員の方がプロでも、濃度や介護量で言えば家庭の方が手厚いのです。

ましてや他人に介護されれば、落ち着かなくなるのは認知症者でなくとも同じです。

介護者が変われば認知症が進行するリスクになり得ます。

まとめ

家庭という限られたスペースで決まった環境の中では行えていたことが、介護施設という集団生活のオープンな環境に置かれると「今までできていたことが出来なくなった」ということは往々にしてあり得ます。

それを以て「認知症が進んだ」と言うのは早合点で、実際は「出来ていたように見えたことは環境が変われば出来なくなることだった」ということが顕在化してきたに過ぎません。

そもそも、「施設に入れて介護のプロに任せれば認知症が改善する」という誤解を持たれている場合は、「施設入所自体が認知症進行のリスクを高める存在」であるということを理解した上で入所申し込みをして頂く必要があります。

もちろん、入所説明をする施設側からの情報提供や情報発信も必要なのですが、現状でわざわざ「施設に入所すると認知症が進行するリスクが高まります」という説明をする職員もいないでしょうし、することさえ許されていないのかもしれません。

事前にそういった説明が可能であれば、こういう家族からありがちな苦情も減っていくのだろうと思います。

こういう本質を伝えられない間は、まだまだ介護業界の闇は深いと言えます。

コメント

  1. 現役保険営業マン より:

    こんばんは。
    私のお客様で、父親がアルツハイマー型認知症になってしまった方がいます。

    その方は一時介護施設に通所していたのですが、尿失禁などの症状が強く出てしまいご家族の判断もあって通所を断念。現在は在宅介護となっているものの、症状が強く出ることはなくなったそうです。

    環境の変化はそれだけ負担になるということですね。なお、お客様は介護施設やスタッフに苦情等を訴えなかったそうです。

    • 山嵐 より:

      >現役保険営業マンさん

      おはようございます。
      コメントありがとうございます^^

      通所ということは、デイサービスや小規模多機能型居宅介護かと思われます。
      日帰りや短い期間での利用でも環境の変化を感じてしまうのに、長期的な入所ともなればもっと負担になるでしょうね。

      在宅介護が可能であればそれが一番なんでしょうが、家族の負担が大きくなるという問題もあります。
      在宅でも施設でもメリット・デメリットがあるので、その辺を十分理解した上で適切な判断が必要ですね。

  2. とも より:

    こんばんは
    今年、認知症ケア専門士に受かりました。手当ても評価も変わりませんが、無知な自分は嫌だったからです。
    『認知症は改善することはない』と著書に書いてありました。改善したように見えても、他の分野で進行しているとも。
    家族よりも事前調査に行ったケアマネとかが『見に行った時と全然違う』と。介護を仕事をして飯食べてる人がそう言うのは、愕然とします。

    • 山嵐 より:

      >ともさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      認知症ケア専門士合格おめでとうございます^^
      「治る」と言われているのは「脳血管性認知症」くらいですね。

      「見に行った時と全然違う」パターンよくあります。
      あるあるですね。