ムービーで「社会福祉の魅力」を刷り込む広報戦略が開始

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福祉業界が新たな広報戦略を開始しました。

「新たな」と言っても方向性自体は全く新しくなく「社会福祉になじみのなかった人達に対してポジティブイメージを発信し理解と共感を得ていこう」というものです。

では何が「新しい」のかと言えば

・動画(ムービー)やブログで発信

・若手女性タレントモデルを起用

・現場職員らがライターとなる

・それらをSNS上で拡散されることを期待

という「若者に向けた内容」になっている点です。

実は私の事業所でもムービーを撮影するらしく、施設の月間予定表にも「ロケ候補日」「ロケ予備日」「ロケ本番」などと今まで見たことのない文字が並んでいました。

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介護従事者からの印象

介護福祉士として介護現場に従事している私の印象をお伝えしようと思います。

印象①「ポジティブイメージは上っ面」

社会福祉の仕事は自分も含め誰が聞いても「素晴らしい仕事」「やりがいのある仕事」です。

そもそも、人を相手にする仕事なら殆どが当てはまる印象です。

なにも福祉の仕事に限ったことではありません。

高齢者との交流や心の通わせ合い、身の回りの支援や「ありがとう」と言ってもらえる喜びに「やりがい」を感じるというような内容では、福祉の仕事の上っ面だけをすくい取った表面的なことでしかなく、本質に迫った生々しさを感じないのです。

そういう情報やイメージは、私が20歳代の頃、福祉のことや介護の仕事について全く意識していなかった時の印象そのままなのです。

私が20歳代の頃は、介護の仕事は高齢者の車椅子を押したり手をつないだりしながら、外を散歩して「良いお天気ですね」「あ、綺麗なお花が咲いていますよ」などと言うことを生業とし、日々心穏やかな日常が繰り返されるものだと思っていました。

介護従事者となった今、もし私が介護の仕事についてそんなことを情報発信していれば「福祉の本質を捉えていない」「綺麗なお花が咲き乱れているのはお前の脳内じゃないのか?」と言われてしまうでしょう。

つまり、そんな上辺だけのポジティブイメージは若者も含め誰もが何となく抱いているものなので、今更上っ面のポジティブイメージを改めて刷り込んでいくことに何の意味もないのです。

印象②「現場職員を起用することでリアル感を演出」

実際に介護をしていない人がいくら何を言おうとリアリティに欠けますが、現に現場に従事しているスタッフがポジティブな情報発信をすれば確かにリアルです。

今回の広報戦略のひとつの肝とも言えます。

しかしここにも危険が潜んでいます。

恐らく起用される職員の多くは「キラキラ系」と呼ばれる人達になろうかと思います。

「キラキラ系介護士」についての詳細は下記記事をご参照下さい。

「キラキラ系介護士」とは「脳内がお花畑の介護職員」のことを指します。 ・正義感や倫理観を前面に押し出した綺麗ごとを言う ...

こういうキラキラしたイメージだけが独り歩きをすると

「福祉は奉仕の仕事」

「自分を犠牲にしてでも相手を幸せにする仕事」

「キラキラ系職員って素敵」

という「間違った福祉観」を世間に植え付けてしまう可能性があります。

何故、キラキラしている職員が危険なのかと言うと

「職員に自己犠牲を強いる」

「収入が少なくてもやりがいさえあれば働ける」

「キラキラしている自分が大好きな自己陶酔派」

であるために、周りがついていけず人間関係が悪化したり、体や心が折れて退職していく職員が多くなり、人員不足となった結果ひいては利用者に満足なケアを提供できなくなってしまうからです。

「キラキラ系職員が存在したら誰も救われない」

ということは現場職員の間では自明の理となりつつあったのですが、その反対路線を走っているのが業界や事業所なのです。

何故なら、業界や事業所にとって「自己犠牲で働いてくれる職員は大変ありがたい存在」であるからなのです。

キラキラした内容も「とても耳触りの良いもの」であることもその理由のひとつでしょう。

しかし、キラキラ系を推進していくと「誰も救われずむしろ崩壊していく」ということに気づきながら、業界も事業所も「臭いものに蓋」をするように新たなキラキラ系を発掘しようとしているのです。

そういう意味で、現に現場に出ている私としてはある種の危険を感じています。

印象③「結局は自己満足」

そもそも論なのですが、どれだけポジティブイメージのムービーを作成し発信しようと、タレントを起用しようと「興味のある人しか見ない」ということになります。

結局は、ムービーに出演した職員やその周囲の人たちの間で話題になるくらいではないでしょうか。

企画者や作り手の自己満足でしかありません。

未来ある若者たちが本当に知りたいのは

「やりがいに対する対価(給料)はどれくらい貰えるのか」

「一家の大黒柱となって妻子を養っていける収入は確保できるのか」

「どういうステップアップコースが用意されていて、どんな将来像が描けるのか」

「夜勤は一人体制なのか」

「職務上、危険はないのか」

「危険な状況に陥った時に守ってもらえる体制はあるのか」

という「本当にリアルな現場の実情」のはずです。

今更、上辺だけのポジティブイメージだけを垂れ流されても、誰もピンとこないということにピンとこない福祉業界と事業所には本当に困ったものです。

SNSも身内だけで拡散されていくのではないでしょうか。

最後に

介護福祉業界には、やりがいなどのポジティブイメージを差し引くと有り余るほどのネガティブなことが存在します。

私が申し上げたいのは、文句や愚痴レベルの話ではなく、その「あり余ったネガティブゾーンについて言及し解決していかなければ、全く意味がない」ということなのです。

本当のポジティブとは、ネガティブを封殺したものではなくて、ネガティブを露出させた上で、「そのネガティブなものをこういう方法で解決しました」と言うのが本物のポジティブな情報発信だと言えるのではないでしょうか。

動画やブログでの情報発信を見ていても、大概が「レクリエーション」か「行事」、たまに「食事」という内容です。

レクや行事は晴れやかで見栄えが良く、情報発信しやすい内容になります。

プライバシーや個人情報の問題があり、なかなかネガティブなものには触れにくい業界ではありますが、そこに斬り込んでいかなければ、これ以上良くなっていくことはないと断言できます。

本音と実情を隠す業界は、いつまで経っても「理解や共感は得られない」のです。

いつでもオファー頂ければ、私がブログ記事を寄稿させて頂きます。

その際は「ネガティブな実情」も含まれますことをご了承ください(オファーなんて来ませんが(笑))。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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コメント

  1. アングラー より:

    SNSを利用する層は、ツイッター等で虐待を受ける介護職員の生の声に触れるわけで。取り繕ったところで全くの無駄ですよね。自分が入ろうとする業界のことくらい調べますから、ムービーで興味持ったとしても。
    ムービー作る予算があれば処遇改善。
    そもそも若い人を介護で働かせて低収入にすることは、税収の低下を意味するわけで。介護報酬のアップダウンで右往左往する業界にとっては実は自滅の道だと思うですよね。事業の継続には確かに若い人が必要だけど。つまるところ、処遇改善もないままに頭数だけ埋めようというその姿勢が問題。
    最後になりましたが今年も更新楽しみにしています。

    • 山嵐 より:

      >アングラーさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      「ムービーを作る予算があれば処遇改善」
      これ名言ですね。

      若い世代がもっと元気になれるような国であって欲しいですね。
      外国人の投入で頭数だけを増やそうとしても、その場しのぎでしかありませんね。
      そもそも外国人もそんなに集まらないと思います。

      更新を楽しみにして頂きまして感激しております^^