食事介助における「速さの美学」とは?危険はないの?目安時間は?

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介助全般に言えることですが、介護現場では「速さの美学」というものが存在します。

実際にはそういう美学は存在しないのですが、介護職員や事業所全体で「ケアを速く済ませられる職員は手馴れていてスムーズな対応ができる良い職員」という風潮があるのも確かです。

以前、食事介助における「全量摂取の美学」について下記記事で書きました。

私のTwitter(ツイッター)アカウントの固定ツイートに「特養の七不思議」というものを置いています。 ...

今回は「食事介助での速さの美学」について「利用者の尊厳は?」「喉詰めやムセ込みのリスクは?」「ベテランでも速さへの過信はまずいのでは?」という内容のご質問を頂きましたので、記事に書きたいと思います。

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「速さの美学」の背景

介護現場での「速さの美学」には一体どのような背景があるのでしょうか。

①仕事は速い方が格好いい

介護現場に限らず、どの職業であっても仕事が速い人、テキパキとこなす人が重宝されます。

「あいつは仕事が速い」

「できるヤツだ」

などと言ってもてはやされます。

上司としても、同じ時間で多くの仕事がこなせる「出来る」部下は可愛いものです。

その延長で、介護現場でも同じ時間で多くのケアを行える職員を「出来る職員」という捉え方をします。

業務や動作自体の速さもあるでしょうが「効率がいい」「ポイントを抑えている」という点も評価に繋がるのだと思います。

②人員不足なので速くしないと業務が回らない

介護現場はご周知の通り、万年人員不足です。

本来、4人の職員でこなすケア業務を2人~3人で行っています。

そうなると、一人ひとりの職員が1.5人~2人分の仕事をしないと業務が回らないのです。

その為には、ケアのスピードを上げなければなりませんし効率化も必要になってきます。

しかし、そもそも人員不足は現場職員の責任ではありませんし、2倍の業務をこなしても給料が増えるわけではありません。

ですから、自分に与えられた環境の中で、自分がこなすべき業務を対価の分だけ働けば良いのですが、そうすると利用者にしわ寄せがいきます。

それは完全に人員不足の問題なので事業所側の責任になります。

しかし、中には自己犠牲を払い2人分の業務をこなす職員や速さを求めて業務を何とか回そうとする職員が現れます。

周りや上司から、「あのスタッフはあんなに速く仕事ができるのに、何故あなたは遅いの?」「あなたがもっとスピードアップできれば、利用者も他のスタッフも今より助かるよ」などということを言われます。

しかし、実際は仕事が遅いわけではなく、普通にやっているだけのはずです。

自己犠牲を払う職員と比較されることで、「あなたは仕事が遅い」という烙印を押されてしまうのです。

人員不足が故に「時間に余裕を持った介護ができない」と言っても過言ではありません。

食事介助における「速さの美学」

介護現場では高齢者という人間を相手にしているわけですから、速いだけでは問題があります。

利用者のスピードに合わせる必要がありますし、尊厳を守らなくてはなりません。

食事介助は特に「喉詰めや誤嚥」などの生命に関わるリスクが高いケアです。

高齢者になると、咀嚼や嚥下機能も衰えてきているので慎重に介助をしなければなりません。

一口ずつ口に運び、利用者の咀嚼・嚥下を確認してから次の食事を口に運びます。

これを誤ると、喉に詰めたりムセ込んで誤嚥をしたりする危険があります。

リスクが高いにも関わらず、介護現場では「速さの美学」で、10分足らずで全量介助させたり、そのことを自慢したり「素晴らしい」と賛美する風潮があります。

しかし、介護現場での食事介助での死亡事故が相次ぎ、介助方法によっては「事故ではなく事件」として取り扱われたり、訴訟に発展するケースが多発しているので、食事介助で「速さの美学」を言うことは少なくなってきたように感じます。

逆に、このご時世でまだそんなことを言っている人や事業所があれば「ちょっと恥ずかしい人」「情報弱者」「危険行為人物」という気がします。

では、ゆっくり介助するのが良いのかと言うとそうでもありません。

「利用者の状態に合わせて介助する」ことが正しい食事介助になります。

何事も、一律ではなく状況に適した臨機応変な対応が必要なのです。

食事介助の目安時間は?

「速いのがダメならゆっくり時間に余裕をもってやろう」というのも極論過ぎます。

先程申し上げたように、「状態に合わせた介助」が重要です。

食事介助にゆっくり1時間も掛けていたら、それこそ他の業務が回らなくなる上に、利用者だって体に掛かってくる負担も大きくなり満腹中枢が働いて余計に食事が進まなくなるでしょう。

体力や満腹中枢も利用者によって状態が違うのかもしれませんが、私は概ね30分を限度に食事介助を終わります。

全量摂取できていようと、できていなかろうと、です。

それは利用者のためでもあり、自分のためでもあり、他の業務のためでもあります。

目安時間を設定することで、利用者に負担を掛けすぎず、次の業務に移ることができます。

「30分でも遅すぎる」なんて言う人がいれば、「介護のプロとしてどうなのかな」と思います。

どんなにゆっくり介助していてもムセたり誤嚥してしまう可能性がありますが、速いスピードで口に押し込むように介助して誤嚥してしまったのと、嚥下を確認しながら介助をしていたのに誤嚥してしまったのでは、責任の大きさに天と地との差があります。

利用者のためにも、自分のためにも、20分~30分ほどの時間を目安に状態に合わせた食事介助をしていきたいところです。

最後に(まとめ)

私も以前に似たような経験があり、ユニットスタッフから「もっと時間に余裕を持った介助がしたいです!」と言われたことがあります。

私は「どうぞどうぞ」と返答したのですが、そのスタッフの食事介助を見ていると、利用者に一口食事を運んだあとに、自分はリビングのテレビに釘付けになり利用者のことを見ていませんでした。

既に利用者は嚥下を終え、次の食事を待っているのにそのスタッフはテレビが気になるようです。

そして数分後に我に返り利用者の口に食事を運んでいました。

「それは誰がどう考えても余裕を持った介助だとは言えない」

「介助中に利用者を見ずにテレビを観ることが時間に余裕を持つということじゃない」

という残念な話もありました。

時間に余裕を持った介助ができないのは「人員不足」が大きく関係してきますが、食事介助においては20分~30分を目安に利用者の状態に合わせた介助をすることを推奨致します。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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コメント

  1. ダメ人間 より:

    こんばんは。

    今回のblogの記事の現状、何なんでしょうかね?
    自分の様な技量が浅い人間は恥ずかしいながら、食介にて介助が必要な利用者に対して、時間がかかってしまいます。
    周りの状況に注意しつつ、咀嚼はどうか?飲み込みはどうか?等を見てて、気付いたら時間が経過してしまってる事が…。

    自分は山嵐さんが「特養の七不思議その1「食べられないのに食べなさい」」の記事で書いてあった、「利用者が食べたくなければ食べなくてもいい」という意見、本当~にそう思います。営業ノルマでもないし。

    時たま、そんなにゴチャゴチャ言うなら、
    「エンシュ〇・リキッドだけ飲ませてればいいんじゃね?」
    と思ったり、それがダメなら
    「フォアグラを作る時、ガチョウやアヒルに沢山の餌を与える為にキツい方法で餌を投入する方法でいいんじゃね?」
    と思います。
    実際に1人の介護職員が複数の利用者の食介にて、回転イスを使って異動しながら介助してるの、餌やりって比喩されてますし。

    • 山嵐 より:

      >ダメ人間さん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      「完食の美学」も「速さの美学」も不要ですよね。
      安心安全な介護をすることは正しいことだと思います。

      それで時間が足りないのであれば、人員が足りないのです。
      事業所が何とかしなければならない問題なのです。

  2. めど立てたい人 より:

    結局②ですね~。

    別に速くと言うより、私の場合は急いでやってましたね。また、よくも悪くも速いことを自慢する職員とは一緒になったことはありません。

    ただ、ゆっくりやりたいっちゃあやりたいですよ。そりゃね。

    従来型をそのままユニット型(笑)にスライドさせたのならそりゃハッキリ言って楽だし、関わり(笑)に時間かけてもやれるけど。

    20~30人前後→10人以下っで、上の通りならね…断じて違う。むしろ浮いたはずの10~20人分いやもっとの余計な業務を詰め込んでさ、米炊き・取り分け・食器洗い等々。

    管理人さんと同じ考えですし、それこそ仮に自分だったら、満腹・なんとなく食べたくない・嫌いな食べ物を30分も嫌だけど1時間以上も目の前でそのうえ、これどうか?もっと飲め?吐き気がするよ。

    …まぁ、そもそも認知症老人が相手だから、我々?とはまた別のベクトルで何も感じないのでしょうね。キラキラではないが(キラキラお花畑)上司だからと疑わず何も考えない真面目な人たち。

    探りを兼ねて下膳をしていたら、真面目な彼彼女の雰囲気が変わるんですよね。中にはわざわざ注意してくれたのもいたけど。

    でもさ、1時間近くも食わせてるせいでさ、もういやでぶちまけてる老人がいて、認知症で満腹中枢ぶっ壊れで食わねぇやつの皿を食い散らかす老人。部屋だのトイレだのと動き出す徘徊老人・・・

    あげくのはてに、それらの対応に総出をあげて5分~10分以上見守りが不在。やれ事故報告だのヒヤリだの連絡ノートだの共有だの共有、共有、する前にさぁ、それをやめようよとは思わないの?なんて思います。

    しかし、キラキラお花畑よろしくそれに従僕を決め込む真面目な人たちにも通じない。通じなかった…です。

    • 山嵐 より:

      >めど立てたい人さん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      結局「人員不足」が原因でしょうね…。

      食指があるのに一口が少ない(小さい)から時間が掛かるならまだしも、口も開けない・咀嚼もしない・嚥下もしない利用者に時間を掛けて介助する意味がわかりませんよね。
      キラキラ系に言わせれば「テクニックが」「食欲をそそる声掛けが」「栄養や水分確保のため」などと言うのでしょうが、運動もしていない高齢者なのにお腹も空かないでしょう。
      我々だって、お腹が空くから食事を摂るのです。
      お腹が空けばまた食べてくれるでしょうし、リスクを高めてまで素早く全量摂取させることはないと思うのです。

      キラキラ系が上司にいるとつらいですね…。