【追記あり】「利用者に暴行は正当業務?」高山簡裁の介護事件を考察

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岐阜県高山市内の介護施設で、利用者の顔を殴るなどして怪我を負わせたとして傷害の罪に問われた34歳の男性介護士の初公判が1月17日に高山簡易裁判所でありました。

ニュースタイトルや「顔を殴る」などのワードを見る限り、どう考えても加害者の男性介護士が悪く、罪を償う必要があると感じます。

しかし、問題は、昨年の10月に同簡裁から罰金30万円の略式命令を受けたにもかかわらず、これを不服として正式裁判を請求した点にあります。

略式命令に従っておけば、刑の執行を猶予し、没収を科し、その他付随の処分をすることができる(刑事訴訟法第461条)のですが、それさえも不服だったということは、やはり何らかの問題があると考えてしまいます。

今回は、その点について考察していきたいと思います。

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ニュース概要

利用者に暴行「正当業務」介護士、無罪主張 高山簡裁初公判

岐阜県高山市内の介護施設で利用者の顔を殴るなどしてけがを負わせたとして、傷害の罪に問われた男性介護士(34)=同市=の初公判が17日、高山簡裁(三﨑雅司裁判官)であり、男性被告は「利用者と従業員の安全のために行ったことで、けがをさせるつもりはなかった」と起訴内容を否認した。弁護側は正当防衛と介護における正当業務行為に当たるとして無罪を主張した。

冒頭陳述で検察側は「被害者にPHSで後頭部をたたかれたことや、他の従業員の助けを得られなかったことに激高して暴行を加えた」と指摘した。

起訴状によると、男性被告は昨年4月17日午後2時15分ごろ、勤務先の介護施設で70代の男性利用者の顔面を拳で数回殴り、床にあおむけに倒すなどの暴行を加え、頭部打撲などのけがを負わせたとされる。

男性被告は昨年10月に同簡裁から罰金30万円の略式命令を受けたが、不服として正式裁判を請求していた。

【引用元】岐阜新聞社

岐阜県高山市内の介護施設で利用者の顔を殴るなどしてけがを負わせたとして、傷害の罪 - Yahoo!ニュース(岐阜新聞Web)

「正当防衛」と「正当業務」

ニュース記事には「正当防衛」と「正当業務」に当たるとして無罪を主張した、と書かれています。

まずは正当防衛と正当業務について解説しておきたいと思います。

「正当防衛」とは

「急迫不正の侵害に対して自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずした行為」は正当防衛として認められています(刑法36条1項)。

今回は、先に利用者から介護士がPHSで頭を叩かれており、その危険を排除し自らの権利を防衛するためにやむを得ずに行った行為であれば「正当防衛」が認められるはずです。

つまり、介護士の反撃が「やむを得ず行った最小限度の範囲内」であるかが争点のひとつとなっています。

「正当業務」とは

「正当業務」とは、業務として正当と認められる行為のことで、「正当業務行為」とも言います。

例えば

・力士やボクサーやプロレスラーなどの格闘技選手が試合でルールの範囲内で相手を殴るなどして怪我をさせる行為

・医師が薬剤を投与したり外科手術をおこなう行為

などは一見、他人を傷つける行為ですが、罪には問われません。

理由は「元々からそういう仕事だから」です。

しかし、今回の事件のように、介護士が危険行為をしてきた利用者をつき飛ばしたり、顔を殴ったりする行為が正当業務行為に当たるかどうかを普通に考えると正当業務には該当しないように感じてしまいます。

あくまで、正当業務ではなく正当防衛の範囲での争点だとは思いますが、しかし斬新な斬り口であるとも言えます。

不服の闇

略式命令を不服としたからには、自分に分があり、正当性があると考えているからでしょう。

もちろん、過剰な反撃や暴行は許されませんが、闇深いと感じたのは「他の従業員の助けを得られなかったこと」という点です。

仲間の介護士が利用者からPHSで頭部を叩かれているのに、助けることもなかったという状況を想像すると異様です。

介護士は我慢して叩かれ続けなければならなかったのでしょうか。

先に「暴行」を受けているわけですから、利用者にも「暴行罪」が適用されて然るべきです。

暴行されている現場を見て見ぬふりをする他従業員たち。

そんな状況では、自分でどうにかするしかありません。

お互いアドレナリンも出まくっていることでしょう。

そんな状況で冷静で居れる方が普通ではありませんし、成り行きや勢いで過剰な反撃になってしまうことも想像できます。

そして最終的に「悪いのは介護士」と言われてしまう結論になってしまっています。

暴力や暴行や傷害はいけませんが、先に仕掛けてきたのは利用者です。

この介護士はこの修羅場の真っ最中に一体どう対応すれば良かったのでしょうか。

不服に思う気持ちもわからなくはありませんし、状況を想像すると闇深いものを感じてしまいます。

まとめ

法律的には素人ですが、介護的には玄人の私は「正当業務ではなく正当防衛が争点なのでは?」と思ってしまいます。

そして、先に手を出した方が悪いとは思いますが、その辺は司法に委ねるとして、百歩譲って「喧嘩両成敗」とするならば、本当に悪いのは「助けることもしなかった他従業員たち」と言えます。

そんな人間関係だったり職場環境では、今後もこういった事件は後を絶たないことでしょう。

そんな状況下で自分の身を守るために行った反撃が「正当業務行為」と認められることがあれば、また介護現場は色々な意味で変わっていくことは間違いありません。

この斬新な斬り口の介護事件の今後を注視していきたいと思います。

(2019年1月20日追記)

この事件は、パン切り包丁を持って施設内を移動していた利用者を介護士が取り押さえた事件と同じ事件のようです。

そうだとするならば、この報道には「パン切り包丁」や「鋭利な刃物」を利用者が持っていた、とういう事実がスッポリ抜け落ちてしまっており、「PHS」とだけしか書かれていません。

明らかな情報操作に感じます。

相手が鋭利な刃物を持っていれば、取り押さえるのが当然です。

若しくは「逃げる」という選択肢もあったのでしょうが、たらればの話になりますが、もし介護士が逃げて他の利用者に被害があった場合は「職責の放棄」「人命救助義務違反」に問われるおそれがあります。

結局、どちらに転んでも介護士が悪くなるのです。

人命救助が義務であるとするならば、今回の介護士の行動は暴行ではなく「正当業務行為」と言っても過言ではありません。

この記事のコメントで、この事件がパン切り包丁の事件であることを教えてもらったあとで考えると「介護士が正当業務を主張」していることが理解できました。

マスコミの報道の仕方にも問題があると言えます。

(追記ここまで)

最後までお読み頂きありがとうございました。

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コメント

  1. アングラー より:

    これってパン切りナイフ持ってうろついてた利用者からナイフを取り上げて制圧した事件ですよね。
    ナイフの下りをカットして介護士だけが悪者にされる、マスコミってほんとに汚い。
    ナイフ持ってうろつくのを放置して、もみ合いになってもサンドバッグになるのが介護の仕事なら、人手不足なんて今後言わないでほしいですよね。そんな危ない仕事誰もしないですよ。

    • 山嵐 より:

      >アングラーさん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      ナント、あのパン切り包丁の事件でしたか。
      私もすっかり失念しておりました。

      そうだとすれば、明らかな情報操作ですね。
      パン切り包丁の記載がなくPHSとだけ書いてあれば読み手側の印象も変わってきますね。

      おっしゃる通り、そんな現状は職場とさえ言えぬ修羅場でしかありませんし、対価も著しく低いのですから人手不足になって当然ですね。

  2. とも より:

    こんにちは
    これはナイフと同様の事件ですね。地元紙にも大きく載ってましたよ。私、近くの話なのですが、家族が「怪我までさせることない」と吹聴しまくったので、ここまで発展してしまったというのがまことしやかな噂です。
    高齢者側の「銃刀法違反」「殺人未遂」「暴行」の罪を認めず、かつ職員の「正当防衛」「一般人逮捕」「他人の生命を守る」を認めない、理不尽な内容ですね。
    人間ですから、いきなり顔面にパンチかますことはないでしょうし、揉み合いになり顔に手が当たったというのが事実だと信じたいのですが…。裁判の行方に注目したいです。

    • 山嵐 より:

      >ともさん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      そのようですね。
      アングラーさんのコメントを読んで気づきました><

      ということで、記事に追記をしました。
      裁判の行方が気になりますね。